「女性起業家インタビュー」vol.16 株式会社和える 代表取締役 矢島里佳さん

財務省近畿財務局・京都財務事務所×ブルームマネジメントのコラボ企画、「女性起業家インタビュー」です!

プロフィール
矢島 里佳 さん
株式会社和える 代表取締役
1988年7月24日、東京都生まれ。二児の母。
職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、慶應義塾大学在学中に、日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の精神性を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時の2011年3月、株式会社和えるを創業。
2012年3月、幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、“0歳からの伝統ブランドaeru”を立ち上げ、日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す。事業承継・中小企業やブランドの原点を整え、魅力化をお手伝いする「伴走型リブランディング事業」を行い、地域の大切な地場産業を次世代につなぐ仕事に従事。自社で実践してきた、「日本の伝統を通じて、ご機嫌(ウェルビーイング)に生きると働くを実現する」講演会やワークショップも展開。その他、日本の伝統や先人の智慧を、暮らしの中で活かしながら次世代につなぐために様々な事業を創造。
事業拠点は、東京「aeru meguro」、京都「aeru gojo」。
「ガイアの夜明け」(テレビ東京)にて特集。

公式ウェブサイト:
和える公式ウェブサイト:https://a-eru.co.jp
“0歳からの伝統ブランドaeru”オンラインショップ:https://shop.a-eru.co.jp

日本人の精神性、人の心を大切にする社会でありたい

−起業のきっかけをお聞かせください。

幼少期より、日本の文化や手仕事に触れる中で、その美しさや背景にある精神性に惹かれてきましたが、現代の暮らしの中でそれらに触れる機会が減っていることに気が付きました。 「日本の伝統は心を豊かにしてくれるのに、なぜ伝わらなくなったのだろう」その問いに向き合う中で、単に守るのではなく、現代の暮らしの中で“使われ続ける形”にすることが必要だと感じました。それならば、自らその仕組みを作ろうと考え、起業に至りました。

「想い」が先にあったのですね。

はい。売上を作ることよりも、社会の「声になる前の声」を拾い、それに応えるために小さく始めるうちに、事業となり、「日本の精神性を次世代につなぎたい」という想いを持った仲間が集まってくれました。とはいえ、ボランティアでは活動を継続できないので、もちろん利益を出す必要があるのですが、ただ稼ぐのではなく「美しく稼ぐ」ことを創業当初から追求しています。

−和えるの「美しく稼ぐ」とは具体的にどのような基準がありますか?

  • 日本の伝統が次世代につながること
  • 三方よし以上
  • 文化と経済の両輪が育まれること

この3つを満たさない案件は、収益性が高くても受けないことにしています。創業当初は、よく「そんなのは綺麗事だ」「ビジネスの世界では無理だ」と言われましたが、綺麗事を現実にしないとご機嫌な社会にはならないと思い、ひたすらこの3つを徹底しながら継続してきました。おかげさまで今年15年目を迎えることができています。和えるは単なる経済指標のみでのスケールを最優先させるのではなく、社会的インパクト指標に目を向けることを大切に経営をしてきました。

資金調達をされる際も、そのような点を踏まえながらされてきたのでしょうか。

はい。学生ビジネスプランコンテストの優勝賞金を資本金に和えるを創業し、初期に日本政策金融公庫様、ベンチャーフィランソロピー様、エンジェル投資家の方などからご支援いただきました。和えるの思想哲学である「美しく稼ぐ」ことは譲れないところでしたので、議決権66.6%以上を私が保有できなくなるような投資は受けないようにしました。また、イグジット(M&AやIPOによる株式売却・利益確定)に頼らない事業モデルのため、ベンチャーキャピタル等は活用しませんでした。

−強い想いと並々ならぬご努力で「和える」は、美しく稼ぐを徹底して階段を上ってこられたのですね。和える最初の事業、“0歳からの伝統ブランドaeru”で、はじめに手掛けられた商品は何だったのでしょうか?

赤ちゃんへの出産祝いとして、「愛情」と「藍染」を掛けた日本の“あい”でお出迎えする『徳島県から 本藍染の 出産祝いセット』を最初のプロダクトとして世に送り出しました。赤ちゃんの人生の初めに日本の色を届けたい。「ジャパンブルー」=「藍色」が世界でも共通認識となっている日本を代表する色でもあることから、藍染を選びました。また、保温効果、紫外線カット効果など、赤ちゃんを守る機能も藍染にはあります。

最初の商品として、食器や玩具なども検討しましたが、何屋さんかを定義せず「日本の精神性を次世代につなぐ」ことを体現するブランドとして出発したいと思っていたので、はじめの商品は創業の想いを伝えることにこだわりました。

ぜひ大切なお子様や大切な方へ、日本の“あい”とともに「おめでとう」の想いをお贈りいただけましたら嬉しいです。

藍染は日本各地にありますが、なぜ徳島を選ばれたのでしょうか?

オーガニックコットンを美しく染める高度な技術力が決め手です。オーガニックコットンは生地に油分が多く染めにくいのですが、同じく技術力が問われる絹を見事に美しく染められる職人さんが徳島にいらっしゃったことが決め手でした。その職人さんとのご縁は、大学時代に出場した徳島地域活性化コンテストがきっかけです。

徳島の藍染の歴史は長く、由緒ある場所。藍染が徳島の地域文化の発展に貢献してきた背景があります。藍は1年でも栽培が途絶えるとダメになってしまうので、戦時中も秘かに栽培を続けてこられた「命がけで守られた伝統」の物語があり、ここに日本人の精神性が受け継がれているように思います。このように残るということは、ただ美しいだけではなく、「人の役に立つ」からだと思います。

−『徳島県から 本藍染の 出産祝いセット』から始まり、0歳からの伝統ブランドaeru”を確立され、様々な商品や事業を展開されています。社員の皆さんとは、どのように「和えるらしさ」を共有されているのでしょうか。

一つひとつの意思決定を和えるの思想哲学に基づいて行っており、社員との対話では必ずその軸を基準に返答するようにしています。社長が社員に従うようにと言って動くものではないと思いますし、私から思想哲学について話すような時間は特段設けていません。社員一人ひとりの心の持ちようであり、和えるらしさを本当に浸透させていくのは経営者ではなく社員の皆さんだと思います。先ほどの「美しく稼ぐ」ことに徹していれば、思想哲学に自然に沿っていくと考えています。

社員の方も自律的に基準に照らして判断しておられるのですね。

和えるは、個人事業主の集まりのような組織だと思っています。従業員という言葉には違和感があり、まるで自分で物事を考えなくてよいかのようです。和えるでは、休日日数や給与は自己申告制で、「自分の給与の3〜5倍の売上」を上げることが前提となっています。会社を続けていくには、給与以外にも様々な経費がかかります。そのことを理解してもらい、給与を支払っても次の事業に投資できるお金を残せるだけの売上を稼いでもらう必要があります。

自身を客観的に見ることができる=「メタ認知できる人」だけが揃っています。仲間に助けられて今日という日があるのに、そのことへの感謝を忘れてしまう人は和えるには合いません。

身の丈を知り、自分事として考えられる社員さんが育っていく風土が素晴らしいですね。その風土を浸透させるために、工夫していることはありますか?

「この判断は和えるらしいか?」と社員同士で日々フィードバックをしてくれているのですが、安心して議論しあえる環境に気を配っています。例えば、悪い出来事があっても個人の人格を責めるようなことはせず、再発防止について考える。先輩後輩に関係なく業務改善提案をしやすい空気づくりに努めています。逆に良い出来事があった時も、属人性をなくし、誰にでも再現できるようにするためにどうしたらよいか議論しあうようにしています。

経営を考えられる人材が社内に何人いるか、育むことが出来るかは、組織にとって非常に重要なことだと思っています。和えるでは中小企業様の伴走型リブランディング事業も行っておりますが、その中で会社経営を自分事として捉えられる社員さんを育むお手伝いもしています。日本の中小企業で昨今多いのは、後継ぎ不在で長年の歴史に終止符を打つ会社です。世の中に必要とされているのに、経営人材不在で消えていくのはとてももったいないと感じます。和えるでは、12~20年スパンで経営者を交代していき、継続的に経営人材を育成していくことが大切だと考えています。

今後、組織をどのように運営していきたいと考えておられますか?

和えるは今年で15年目、今後5年を「次の世代に引き継ぐ」期間にしたいと考えています。次の「お母さん」(後継者)は社内外から広く募集し、今いる社員への承継に固執せず第三者承継もありえます。

3~5年後、2代目社長に既存事業をすべて任せ、創業者である私は新たなステージを開拓しながら、半分くらいの時間を和えるの新社長を支えるために使えればと考えています。社内に経営ができる人材が複数いる体制が理想で、経営人材の育成に力を入れていきたいと思っています。

とても素敵なお考えですね。社会全体としては、今後どのようになってほしいと思われますか?

「今日も1日無事でありがたかった」と感謝できる社会ですかね。いろんなことがあっても1日の最後には心穏やかに過ごせる人がたくさんいる社会はご機嫌ですよね。「美しく稼ぐ」とも通ずるところがありますが、終わりなき経済成長の社会から「足るを知る経済」への転換。GDPや売上・賃金のみではなく、心身の健康が大切です。

お金をたくさん持っていても幸せでない人もいます。一方で、決して多額の資産を所有しているわけではなくても日常に感謝し幸せな人もいる。「安寧」、「平穏」、日本の精神性を感じられるような社会。和えるでは、訪日外国人の方に日本の精神性を伝えるワークショップも開催しているのですが、外国の方々は日本の精神性に惹かれ学びたいという気持ちで、日本へお越しになっているようです。文化と経済の循環を両立することが当たり前の社会に向けて、民間企業だけでなく、国全体で「良い会社」の指標や定義を見直していくような動きがあるといいなと思います。

本日取材をさせていただいている京都「aeru gojo」さんは、喧騒から離れた雰囲気で、まさに「安寧」や「平穏」という言葉がぴったりです。来店されていた外国の方も、大変興味深そうにお店をご覧になっている様子でした。京都には、もともとゆかりがあったのでしょうか?

繋がりはありませんでした。京都は古都として、天皇や公家、職人・伝統工芸の文化が集中し、現代においても日本人の精神性や文化が息づいている場所だと感じています。いつか住みたいという想いもあり、2013年から京都に通い始め、通う中で様々なご縁を紹介いただき、和えるは、東京と京都の二拠点となりました。

写真提供:株式会社和える

「日本の精神性」をいかに大切に愛されているかが伝わってくるお話ばかりでした。最後に、これから起業を目指す女性へ、起業する前にやっておくべきことやメッセージをお願いします。

起業前に、徹底的に自己対話をし、ブレない軸をしっかりと打ち立てることが大事だと思います。「しなやかに活きる」と「働く」を和えて自分らしく生きることを大切にしていただけるとご機嫌な経営者になれるかと存じます。

−ありがとうございました。

今回は、近畿財務局の福嶋さん、磯谷さんにもご参加いただき、インタビューを行いました!

矢島さんに一問一答

経営する上で一番大切なことは?
直感力、メタ認知力

座右の銘
三方よし以上

京都のおすすめスポット
松原通り:京都「aeru gojo」、堤淺吉漆店、京菓子司 末富

(聞き手:近畿財務局京都財務事務所 福嶋氏、磯谷氏、ブルームマネジメント 伊藤

株式会社和える
和える公式ウェブサイト:https://a-eru.co.jp
“0歳からの伝統ブランドaeru”オンラインショップ:https://shop.a-eru.co.jp
書籍:『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』(日本実業出版社):https://amzn.asia/d/2ESDAPC