「女性起業家インタビュー」vol.08 株式会社 TAJIRO工房 三好亜海さん

財務省近畿財務局・京都財務事務所×ブルームマネジメントのコラボ企画、「女性起業家インタビュー」です!

プロフィール
三好亜海さん 株式会社 TAJIRO工房 代表取締役
1985年生まれ、兵庫県出身。
2008年 立命館大学 経営学部を卒業
2008年 株式会社近畿日本ツーリスト入社。教育旅行部署にて京都の公立私立中学校、高等学校の修学旅行の営業、添乗業務に従事、国内外様々な場所を訪れる。
2015年 屋号「TAJIIRO工房」として事業を開始。
2019年 株式会社TAJIRO工房を設立
公式ウェブサイト:株式会社TAJIRO工房

『想像できないものは創造できない』という言葉を事業理念として、子どもたちの未来に思いを馳せながら歩んでいます。

−起業のきっかけをお聞かせください。

私は芸術一家に生まれました。自分自身はアートの道には進まず、大学では経営学部に進み、大手旅行会社に就職、国内外様々な場所を訪れました。死ぬほど働いた会社を結婚退職、時間ができた私は実家の母のアトリエでふと30年前私が通っていた母の絵画教室アトリエレゴットがまだ開校しているということに気づきました。

「これなんで?」「これ、どんな意味があるん?」そんな会話が繰り返される中、初めて母の仕事について興味が湧きました。

−お母様が続けてこられた事業に興味をもたれたのがきっかけになったのですね。

私は、「そうだ!起業をしよう!!」と思って始めたというわけではなく、また芸術家たちの中で育ったからこそ、その苦労や、彼らの持つ才能を肌で感じており、自分自身がアートの道に進むということは全く考えていませんでした。むしろ遠ざけていた世界です。

しかし、ある日、想像力を育む母の教室の素晴らしさを知ったとき、「母の絵画造形教室『アトリエレゴット』は子どもたちの未来を豊かにする。これがなくなってしまうのはもったいない。」と思いました。そこで、母の30年間に渡るノウハウを詰め込んだカリキュラムを作成し、未経験・芸大卒でなくとも志ある方であれば開校できる国内初の絵画造形教室のフランチャイズ事業を立ち上げました。

−現在は、全国に展開されていて、北海道から沖縄まで25校以上、700人以上の生徒さんが通っていらっしゃると伺っています。

ありがたいことです。 『想像できないものは創造できない』という言葉を事業理念として、子どもたちの未来に思いを馳せながら大切にこの事業を現場の先生方とともに歩んでいます。

また、2021年1月には本社を宇治橋通り商店街に移し、新たな事業として今度はフラワーデザイナーの姉と共に、TAJIRO工房という会社を育ててくれている街である宇治への恩返しを目指し、宇治茶を活用した新しいフラワーデザイン「茶和花」の販売をスタートしました。

−「茶和花」のコンセプトをお聞かせください。

繊細な宇治茶の茶葉は世界中の方に親しまれる一方で廃棄される量も多いです。その廃棄予定の茶葉を茶園から直接仕入れ、茶葉の持つ深い香りと見た目を生かしアーティストの力で茶葉のセカンドストーリーを提案しております。売り手よし、買い手よし、作り手(生産者)よし、街(宇治)によし、未来よしの五方よしを目指して活動しています。

−売上を上げるためになさったことを教えてください。

発信をすることだと思います。作り手さんと話していると良いものを作れば売れるだろう、デザインが良ければ売れるだろう、そんな発想の方も多くいらっしゃいますが、モノやサービスが溢れている中で「良いモノ」というのはスタート地点に立つための最低事項であり、それを「見える化」して人に伝えるというアクションを続けることでようやく売上を上げる第一歩を踏み出すことができるものだと考えています。

ホームページ、SNS、プレスリリース、展示会、コンテスト等、発信する方法は様々あるとは思いますので、その中から自分自身にあった方法を選ぶこと、そして、その発信を続けることが大切だと思います。

−貴社のウェブサイトも三好さん自身が制作されたと伺いました。

私の場合は、起業当初、子供がまだ赤ちゃんだったため、展示会の参加や出張ということが難しかったです。そこで、ひたすらホームページの制作とSEO対策の知識を勉強し、実際に運用をしてきました。これが継続的な売り上げにつながっていると思います。

今はその頃より自由に動くことができるようになったので、展示会やコンテストなんかにも参加していますが、女性起業家の場合は、男性に比べて出産や育児、介護をする可能性が多くあると思います。オンラインツールは自分がいないところで24時間働いてくれているので、何かしら自分に得意そうなオンライン的な発信のツールを少しだけ極めるということは効果的じゃないかと思います。

−起業に必要な資金はどのように調達しましたか。

自己資金です。それまで専業主婦だったからできたことなのでしょうが、自分のお給料1万円からはじめるなど、ほとんどお金はかけずにスタートしました。 今は融資も受けています。お金の面だけでなく、お付き合いしている金融機関は、とても親身になってくれていて感謝しています。例えば、事業のことを一緒になって考えてくれたり。もちろん、最終的に決めるのは自分自身だとは思いますが、誰かが側にいるというのは心を維持する原動力になります。

−株式会社という事業形態を選ばれた理由を教えてください。

この質問の意味がちょっとわからないくらい、株式会社にしない理由ってなんなのかしら…みたいな感じです。私は、社会をよくすることにやりがいを感じるタイプなので、社会的な信頼の高い法人で事業を運営するということに何も迷いはありませんでした。ただ母の反対は大きかったですが。

−ご家族の反対をどう説得されましたか。

はじめは「冗談やめて」から始まって・・・。それでも、時間をかけて丁寧に説明することで、最終的には同意をしてくれて法人化することができました。

−祇園ギャラリーの開設や茶和花の販売など事業領域を広げていらっしゃいます。ビジネスを拡大する際に心がけていることは。

全部で4つあります。まずは、持続可能であること。事業計画、働き方、生活も含めて、これは1年後もできるか、10年後もできるか、30年後もできるかを問い、そしてできる仕組みを作ることを徹底して行います。これは自分の人生の中で2回大きく体調を壊した経験から学んだことだと思います。

次に、できる方法を考えることです。新しい事業を始めるということは、モノもサービスも溢れかえっている現代において「誰も取り組んでいないこと、解決できていないこと」を実現することだと捉え、どのようにすれば実現できるのかを考えています。

3つめは、「もちはもちや」精神です。絵画造形教室の運営に関しては母に、茶和花のデザインは姉に任せています。一つ一つの事業に、その道のプロを置くことが大切で、本物を提供できる人でないと中身がない事業になると思っています。4つめはシンプルですが、続けることですね。。

−起業する前にやっておくべきことはありますか。

自分はどういうことが得意でどういうことが好きなのかを客観的に理解しておくことだと思います。そうすれば、苦手な分野で無理に頑張ることもなく自分が心から楽しめて得意な分野で活動していけるのかなぁと思います。

−自分自身の棚卸しですね。他にはございますか。

はい。あとは、色々なことを勉強すること。自分の分野外の多くの知識を持っておくことは案外役に立つなぁと感じます。時間は有限ですので、程度はありますが。

−これからの時代に、起業家を目指す女性にメッセージをお願いします!

「起業をしたい!!」と思って起業したのではなく、「こんな世の中にしたい。こんなふうになれば便利」という思いがあって、起業という流れになったのだと思います。いずれにしても思いがあれば、きっとその思いを実現できるように自分が頑張れると思います。

途中で辞めることなく、試行錯誤を重ねることで、気づいたら事業が形になっていて、それを周りの人は成功って呼ぶのかもしれないです。

思いだけではできないかもしれないけど、だけど思いがないとできないと思います。

その思いにブレないで。 きっとすごく楽しいと思います。

三好さんに一問一答

経営する上で一番大切なことは?
経営理念にブレることなく続けること、続けられる計画であること。

座右の銘
「継続は力なり」と、「正義は勝つ」

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最後に一言!
これからも楽しく生きていきたいです!

(聞き手:近畿財務局京都財務事務所 星野氏 奈須氏、ブルームマネジメント 伊藤

株式会社TAJIRO工房
公式ウェブサイト:株式会社TAJIRO工房