「女性起業家インタビュー」vol.07 株式会社Dodici 大河内愛加さん

財務省近畿財務局・京都財務事務所×ブルームマネジメントのコラボ企画、「女性起業家インタビュー」です!

プロフィール
大河内愛加さん 株式会社Dodici 代表取締役
15歳から家族でミラノに移住。
ミラノにあるデザイン専門の大学Istituto Europeo di Design (イスティトゥート・エウロペオ・ディ・デザイン)の広告コミュニケーション学科を2014年に卒業。現地でメイドインジャパンのプロダクトを紹介するショールームに勤務した経験から、日本の文化などに興味を持つようになる。
その後、グラフィックデザイナーやアートディレクターとしてフリーランスで活動しながら2016年、自身のブランドrenacnatta(レナクナッタ)を始動。
2019年に法人化し、株式会社Dodici(ドーディチ)を設立。2021年には二つ目のブランドcravatta by renacnatta(クラヴァッタ・バイ・レナクナッタ)を創設。現在は京都とミラノで活動している。
公式ウェブサイト:renacnatta

「なぜその事業を自分がするのか」と自問自答するのが大切だと思います。

−事業内容をお聞かせください。

株式会社Dodici(ドーディチ)の事業内容としてはアパレルのD2Cブランドを経営しています。メインのブランドはrenacnatta(レナクナッタ)といいます。このブランド名renacnattaは使われなくなったもの、着られなくなったもの、そして以前より作られなくなったもの、こういった「レナクナッタ」素材や技術をつかうことに由来しています。

具体的にはデッドストックになっているイタリアのシルクや日本の着物地を使ったり、斜陽産業となっている伝統工芸、西陣織、金彩、久留米絣などを用いたレディースのアイテムを展開しています。

−D2C とは、Direct-to-Consumerの略で、貴社で企画、製造した製品をどこの店舗も介すことなく自社のECサイトで直接顧客へ販売するようなビジネスモデルのことですね。また、2021年に始動した2つめのブランド、cravattaについてもお聞かせください。

はい。cravatta by renacnatta(クラヴァッタ・バイ・レナクナッタ)というブランドなのですが、cravattaはイタリア語でネクタイという意味なのですがその名の通りネクタイをメインアイテムに取り扱うメンズ寄りのブランドです。このブランドでは着物のアップサイクルをテーマにしているので全てのアイテムが着物をほどいてつくったものになります。

−レナクナッタの由来は、「作られなくなったもの」や「着られなくなったもの」といった〇〇レナクナッタから来ているのですね。

〇〇レナクナッタものというのはネガティブな意味を持ちますが、あえてそれをブランド名にしています。そういうものを使わなくても売れる商品はいくらでも作れます。でも弊社は、社会から取り残されているものに光をあてる企業でありたいと思っています。

−起業しようと思ったきっかけをお聞かせください。

アートディレクションやグラフィックデザイナーというクライアントがいないと成立しない仕事をずっとしていました。そうなるとやっぱり最後の決定権は絶対自分でくだせないんです。ましてやまだ年齢も20代前半でしたので、とにかく案件をこなして経験にするという感じでした。

そのような中、残念ながら、自分では満足いく仕上がりにならず、自分のデザインとして世に出てほしくないなと思う結果になる仕事もありました。私にしかできないことってなんだろうと改めて考えていた時にそれはその時すでに始めていたrenacnattaをしっかり育てることだと思いました。

−アートディレクションやグラフィックデザイナーの仕事もしながら、renacnattaの事業も進めていたということですね。

はい。そこで今までは何足かのわらじというスタイルでお仕事をしていましたがそのような経験からrenacnattaだけでやっていこうと決めました。

−売上を上げるためにやったこと。また、一番効果的だったことは?

SNSでしっかり発信することです。ちなみに、私はSNSを運用すると思ったことがありません。元々発信することが好きだったので自分の思っていることやブランドのことを書いていたら少しずつファンが集まってきました。今も広告費はほぼゼロでほとんどのお客様がSNSのフォロワーさんです。しっかり発信していくとそれが広報的な役割にもなりメディアからもお話がきたりもします。

−日々の発信は大事だということですね。

はい、そうだと思います。また、売上に関して、1番効果的だったことは、クラウドファンディングかもしれません。これもSNSとの相乗効果でとても盛り上がりました。

−大河内さんは、京都とミラノを行き来されていると伺っております。海外から見て日本、そして京都はどのように映っていますか。ビジネスを展開する上での京都の魅力も教えてください。

イタリアをはじめとするヨーロッパは古いものがたくさんあり、それを大切に残す文化が根付いています。私はミラノの生活でそこに1番惹かれました。日本は新しいものに溢れすぎています。それはとても新鮮で面白いことでもあり、日本の良さだと思います。

ただ、その代わり簡単に捨てる習慣も濃くあり、残念に思うこともあります。 その中でも京都は日本の中でも古い文化がまだまだたくさん残っている方ですので私はそれを残す手伝いをしたいと思い、今活動しています。

−貴社のSDGsへの取り組みを教えてください。

「つくる責任、つかう責任」の部分を意識しています。日本国内では約29億点ものアパレル製品が供給されていますが、一方で消費されている数は約14億点のみ、半数程度にあたる約15億点は売れ残りによる過剰在庫となり処分を余儀なくされています。

−過剰在庫ですか。

はい、そこで弊社では在庫をほぼ持たず、在庫を用意しても毎回しっかり売り切る、もしくは受注生産にしてその分だけをつくるという体制にしています。在庫を持たない受注生産はシステム的には簡単に思えますが、1ヶ月以上、遅い時は3、4ヶ月お客様を待たせることになります。クレーマーにならずに待ってくださる熱狂的なファンを作る過程が難しく、そして1番大事だと思います。

−創業後、辛かったことや予想外のトラブルを聞かせてください。また、それをどのように乗り越えましたか。

コロナ禍で西陣織のマスクをつくったとき、SNSではバズり、メディアにも色々なところに取り上げいていただき、予想以上に注文が入ったことがありました。そのときも受注生産の体制をとっていたのでお届けまでには時間がかかる旨を商品ページに表記していましたがそれを読まずにすぐ届くと思っているお客さんがたくさんいました。

そして受注なのでキャンセル不可なことも明記していましたが届くのが遅いという理由でキャンセル希望のメールが日々たくさんきました。キャンセル分も結果売れたので利益に響いたわけではないのですが、クレームに疲弊してしまいました。

−その後もテレビやメディアで取り上げられることも多いと思うのですが、どのように対応されたのでしょうか。

はい、その後、テレビの全国放送で取り上げられることがあったのでしっかり作っている工程を放送していただき、決して機械を用い、流れ作業で作っているのではなく職人さんが一個一個丁寧に作っている、そしてお届けには時間がかかることをしっかり伝えました。そうすることでキャンセルはかなり減りました。多くの人の目に触れるときはそれまで以上にコミュニケーションに力をいれる必要性を感じました

−創業にあたり、相談相手はいましたか。

父と夫です。それぞれ経営の先輩だったので今でも時々相談します。とはいえ、D2Cはやっていない人たちなのでD2Cの運営に関してというより経営全般に関して聞いたりしています。

−①時代を先読みする力 ②コミュニケーション能力 ③ロジカル思考 この中で経営者の資質として一番重要なものは何だと思いますか?理由と共にお答えください。

コミュニケーション能力です。コミュニケーション能力というより言語化する能力が必要だと思っています。今の時代やはりSNSなどでの経営者の発信がファンや仲間を増やす1番の近道だと思っています。

−なるほど。

そして、自分の頭の中や、日常の気づきなどをうまく言語化することは取材でもプレゼンでも必要になってきます。あと私は時代を先読もうと考えたこともあまりないですし、ロジカル思考よりかはひらめきで動くこともあるので消去法という感じでもありますが。

−(今から起業する人へ)起業する前にやっておくべきことはありますか。

事業内容にもよると思いますがファンをつくっておくのは損ではないと思います。起業前の準備段階で発信などしていたら、より応援してあげたいという気持ちになると思います。

−コロナの影響と今後(アフターコロナ)の事業展開を教えてください。

最初からオンラインでの展開がメインだったのでとくに悪い影響はありませんでした。ただ、展示会などを予約制にするなど人数を絞りましたので、お客様同士が交流できるオフラインならではの楽しさというのは減ってしまいました。今度もオンラインをメインにサービスを充実させて、オフラインの機会とのバランスをいつでも取れるようにしていたいと思います。

−これからの時代に、起業家を目指す女性にメッセージをお願いします!

日々様々なサービス、商品が生まれています。そんな中で埋もれないためには「なぜその事業を自分がするのか」と自問自答するのが大切だと思います。私だからできる、私にしかできない、そういう思いが根底にあると大抵のことではへこたれないし、”正義感”をもってビジネスを進めることができます。

正義感があるとたとえうまくいかない時があっても立ち直ろうとする力が強く働きます。それはもしかしたら自分のネガティブな経験からくることもあるかもしれない。でもそういうネガティブな経験をプラスのパワーにできた時大きな力になります。そういう強固な思いを持つことができる事業をする経営者が増えたら面白い世の中になるんじゃないかなと思います。

大河内さんに一問一答

経営する上で一番大切なことは?
決断力

座右の銘
meglio tardi che mai (遅くともなさざるに勝る)

京都のおすすめスポット
常寂光寺

愛読書は?
momo。読むたびに本の面白さを思い出させてくれる

(聞き手:ブルームマネジメント 伊藤

株式会社Dodici
公式ウェブサイト:renacnatta