【自分の棚卸をしてみましょう。】公認会計士・税理士 伊藤弥生

「自分の棚卸(たなおろし)」という言葉があります。この棚卸とは、会社などで店舗や倉庫にある商品を一つ一つ実際に数える作業のことをいいます。

会社は、仕入れた商品の数、売れた商品の数を記録しています。そのため、店舗や倉庫にある商品についても、それらの記録を足し引きすれば、実際に数えるまでもなく現在あるはずの個数はすぐに計算でわかります。

ただ、これはあくまで「あるはず」の商品の数であり、実際に「ある」商品の数ではありません。もしかしたらなくなってしまっている商品もあるかもしれません。

そこで、定期的に実物を人の目で見て数えることで、実際にある商品の数を明らかにします。さらに、全ての商品を人が見ることにより、汚れたり、壊れたり、時代遅れになったりして売り物にならなくなった商品を発見することもできます。

こうして、売り物として本当に会社の役に立つ商品として、どのような商品がいくつあるのかが正確に把握できるのです。

この会社を自分に置き換えて考えてみるのが「自分の棚卸」です。会社における商品は、自分の場合には、これまで積み上げてきた経験やキャリア、持っている資格や知識、特技、さらには自分自身のキャラクターや性格になります。

自分がこれから進んでいく道における自分の強みを把握する作業がここでの「自分の棚卸」です。 ここでは起業するにあたっての「自分の棚卸」を考えてみます。商売での成功の秘訣は「何をやるか」ではなく「どうやってやるか」であるとよく言われます。

しかし、どんなに上手なやり方があったとしても、自分の持っている能力や経験ではできないやり方ではうまくいきません。例えば、社交性ゼロの人が、飛び込み営業で人脈を作り販路を築くという商売のやり方をしてもうまくいくはずがありません。

「自分の棚卸」を実施して、自分に適した商売のやり方を考えることも必要です。

公認会計士・税理士 伊藤弥生