財務省近畿財務局・京都財務事務所×ブルームマネジメントのコラボ企画、「女性起業家インタビュー」です!
プロフィール
新井恭子さん 京都サンダー株式会社代表取締役
一般社団法人建設ディレクター協会 理事長
京都府京都市生まれ。1996年京都サンダー株式会社に入社、2012年に代表取締役就任。建設業関連のIT支援に従事した経験から建設企業のバックオフィスからコミュニケーションとIT力で支援する「建設ディレクター®」を創出したいと思い立つ。「建設ディレクター」育成を通し、建設業界の女性活躍や新規雇用を目指す。2017年一般社団法人建設ディレクター協会設立。
公式ウェブサイト:京都サンダー株式会社
「京都で認められてうまくいくことは世界に通用すると感じています。」
−起業しようと思ったきっかけは?
建設ディレクター導入支援事業を始めようと思ったのは、建設業の担い手不足の課題を解決したいと思ったことがきっかけです。建設業は全国で47万社、約500万人が働く重要な産業である一方、3Kというイメージも根強く、人材不足が顕著です。高齢化により今後約100万人もの離職が見込まれているとも言われています。
−建設ディレクターを導入することは建設業の現場が抱える問題を解決するとともに雇用創出にも貢献するということですね。
はい、その通りです。建設業では、現場技術者の書類業務が膨大であり、また長時間労働の現状を目の当たりにしてきました。一方、事務職の女性は長年固定的な業務を担うことでキャリアパスが描きにくく、潜在的能力を秘めているにも関わらず活かしきれていない現状に疑問を持っていました。現場とオフィスをつなぎ、働く全員が参加する新しい働き方が求められていると確信し、建設業における新しい職域を提唱し、教育事業をスタートしました。
−メインとなる顧客の層を教えてください。
全国の地域建設企業がメインのお客様です。
−現在(2021年7月)は、41都道府県に導入実績を持つ、建設ディレクター導入支援事業ですが、売上を上げるために効果的だったことは何でしょうか。
広告や、個別訪問などいわゆる営業らしい営業はしておりません。業界新聞に取り上げていただいたり、年に1回シンポジウムを開催したりすることで取り組みを知り、興味を持ってくださった方に対して真摯に支援を行うことで地道に努力を重ねてきました。
−取り組みを知ってもらうことが大切なのですね。
はい、そうだと思います。また、建設ディレクターを目指すのは事務職を担う女性の方が多いです。コロナ禍でオンライン研修を取り入れたのですが、移動にかかる時間的なコストがなくなりどこからでも参加できる利便性から、家庭の事情を抱える女性も参加しやすく、ここで一気に全国規模に拡がったところもあります。これは弊社がもともとIT導入支援事業を行っていたからこそ、柔軟に対応できたものだと思っております。
さらに言えば、2020年に建設ディレクター育成講座が「厚生労働省就職氷河期世代の方向け資格等習得コース事業」に採択されました。こちらも弾みになりそうです。
−男性社会で成長してきた建設業ですが、ここ最近は変わってきたと感じられますか。
最初から株式会社で始めまし建設業の女性就業比率は当時16.5%、一般産業の平均4割に対して圧倒的に低く、完全な男性社会であります。また利益は現場でしか生まれないという固定的な考え方の元、バックオフィスの女性の育成や女性の活躍ということへの反応が冷ややかな傾向がありました。
なぜこの事業に取組もうと思ったか、何のためにこれが必要なのか、これがどう変化を遂げるかということを丁寧に説明し、理解を得るのに時間を要しましたし、現在も進行形です。
−新井さんはお父様の事業を引き継がれ、そして新たなサービス提供を始められましたが、事業を継がれて、辛かったことや予想外のトラブルはございましたか。
辛かったことではありませんが、京都は昔の文化を守りつつ、新しいものを取りいれる土地柄であるため京都で認められてうまくいくことは全国展開に繋がり、世界に通用すると感じています。その分、商品やサービスへのこだわりがあり、認められるまで時間を要するなと思っていますが一旦認めていただくと京都発として、ブランドとなり横のつながりも大切にする文化ゆえ、評価が口コミ、紹介で広がっていく京都ならではの風土があります。
−先ほどの話と重複するようですが、女性ということでやはり苦労はされたのでしょうか。
なかったといえば嘘になります。もしかしたら女性だから、が理由ではないかもしれませんが、京都は新しいものを受け入れるのは難しい風土が少なからずあると感じております。
ただ、求められる標準値が高いことが程よいプレッシャーとなり、より良いモノやサービスが生まれるのは京都ならではと思いますのでこのような土壌で鍛えられている事は弊社の強みであります。
−この原動力はどこからくるのでしょうか。業界を良くしたいという思いだけではここまでできないのでは?
確かに、毎日泣いていたこともあります(笑)ただ、一つずつ積み重ねることで光が見えてきます。そして、光が見えてくると、また前へ進めます。弊社のメンバーもたいへん心強く、私自身、励まされてここまでやってきました。
−貴社のSDGsへの取り組みを教えてください。
弊社が推進する教育事業では、開発目標である「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等の実現」、を目標に掲げて活動しています、持続可能な社会に共存していくために技術力、知識を身につけて、女性も能力を発揮できる環境と風土を作っていきます。
また、多様な人材の活躍により、労働集約型の建設産業のバックオフィスと生産現場を繋ぐマネジメント手法を変革し、地域経済の生産性をあげて、雇用促進につなげます。
−ずばり10年後、どんな経営者になっていたいですか?
私自身より、建設業界の存在が社会にとって今よりもっと身近な存在になっていてほしいです。
例えば子供の将来の夢として建設業界の職業が出てくるような。 今までもこれからも社会のインフラを支え維持していく業界なので世間一般にその功績が認識され憧れの業界になってもらえたらいいなと思います。
−起業する前にやっておくべきことや心掛けはありますか。
私は敢えて「起業」という形を選択したわけではなく新しい職域を創出するため必然的に、新しく協会を立ち上げたことになります。細かい起業準備は沢山あると思いますが、強いて言えば「人助け」からくるオリジナリティでしょうか。
−「人助け」からくるオリジナリティですか。
はい。「人助け」は助けられる方も助ける方もお互い良い作用が働くため持続可能な業だと思います。
−ブルームマネジメント等女性起業家を支援する取組についてメッセージをお願いします。
個々では不安に思うことも他者と共有することで解決の糸口が見え、ハードルが低くなることが多々あります。支援されている皆さま方もご相談に来られる女性も、共に心強くなれる活動を実践されていることに尊敬の念を抱いております。
−ありがとうございます。では、最後に、これからの時代に、起業家を目指す女性にメッセージをお願いします!
コロナ禍の今、様々な事柄が淘汰され一見フラットに近づきつつある気がします。 これらの変化の中から必要とされているもの、組み合わせて需要が高まるもの、情報のキャッチアップと女性ならではの感性を活かして目標に向かって一緒に頑張りましょう!
新井社長に一問一答
経営する上で一番大切なことは?
ご縁を大切にする
座右の銘
不易流行
京都のおすすめスポット
弊社から歩いて3分ほどの京都御苑。日本のセントラルパークだと思っています(笑)
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建設業に女性が働ける職域があることを知っていただきたいです。
(聞き手:近畿財務局京都財務事務所 井上氏、田原氏、向田氏、ブルームマネジメント 伊藤)
京都サンダー株式会社
公式ウェブサイト:京都サンダー株式会社