【建築基準法って何?守るべきポイントは?②】(小玉恵美)

こんにちは、クロスオーバーネットワークの小玉恵美です。

今回も前回に引き続き【建築基準法って何?守るべきポイントは?②】として建物の耐震と、建築確認申請についてお話しさせて頂こうと思います。

建物の耐震とは?

 

昨年の2018年6月に起きた『大阪府北部地震』では、最大震度は6度弱でした。
この地震で目立ったのが屋根瓦の崩落とブロック塀の倒壊です。
今回、家屋の倒壊が目立たなかったのはナゼか。それは震度6弱という地震の大きさと、地震波の周期が『極短周期』という小刻みに揺れるような地震が原因です。
『極短周期』によって影響が出やすいのはブロック塀や家具、屋根瓦などの。一方、古い木造家屋は震度6弱程度の『極短周期』に対しては影響をあまり受けません。

 

では実際、目の前にある建物がどれくらいの震度に耐えられるのかを知るにはどうすればいいのでしょうか。
その基準を制定しているのも、『建築基準法』です。
現在、建物の強さについて建築基準法で定められている基準は、「大規模の地震で倒壊・崩壊しない事」となっています。
ここでいう大規模の地震とは、「震度6強から震度7程度」です。
この基準を『新耐震基準』と呼び、定められたのが1981年6月。つまり、1981年6月以降に建てられた建物は「震度6強から震度7程度」で倒壊・崩壊しないとされています。

 

では、1981年以前の建物についてはどうか。
1981年以前の基準を『旧耐震基準』と呼び、「震度5程度で即座に倒壊しない事」とされています。

今最も心配されているのが、南海トラフ地震です。
国土交通省の被害想定では、M8~M9クラス、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。

 


つまり、1981年6月以降の『新耐震基準』の規定を満たす建物については、建築当初の基準を維持出来ていれば倒壊は免れると言えます。

開業を予定されている方は、物件を探される際のチェックポイントとして建築年代も一つの基準としてみは如何でしょうか。

 

建築確認申請とは?

 

さて、建物を建てる際に最も重要なポイントがあります。
『建築確認』です。

 

『建築基準法』では、建物に関するありとあらゆる規定があります。
建物を建てる時には、それら全ての規定に則って建物を計画しなければなりません。
では、その建物が全ての規定をクリアしているかどうかは、誰がどうやってチェックするのでしょうか。
自己判断、とはいきませんよね。

 

そこで必要となって来るチェック機能が『建築確認』です。
10㎡以上の建物を計画する時は、建物が建築基準法に則った計画になっているかどうかを、『地方自治体』若しくは、国土交通大臣や都道府県知事から指定を受けた『指定認定機関』が、『建築士』から提出された『確認申請書』でチェックをし、届出通りの建物が建築されたかどうかを『検査』する機能があります。

 

『確認申請書』には建築基準法にかかる全ての情報が設計図書として示されています。
検査を受け、問題がなければ『建築確認済証』が交付されます。
これによって、届け出た建物を「建築する事」が許可されるのです。
次に、届け出た計画通りに工事が進んでいるかをチェックする機能として、工事途中に『中間検査』という検査を受けます。合格すると『中間検査合格証』が交付されます。
そして更に、建物の建築が完了すると、『確認申請書』通りの建物になっているかどうかをチェックする機能として、『完了検査』という検査を受けます。
この検査に合格すると『検査済証』が交付され、ようやく『建築確認』全ての工程が完了します。

 

つまり、『建築確認済証』『中間検査合格証』『検査済証』が揃っている建物は『建築基準法』に則った安全な建物であるという事です。(※中間検査については例外がありますので無い場合もあります。)

 

逆に言えば、『建築確認済証』『検査済証』が無い建物については、何かしら問題がある可能性があります。例えば、違法建築など。そうなると、耐震性の保証も出来ません。
また、住宅ローンなどが使えないなどの支障出てきます。
現在はそういった不具合に関しての救済策も出て来てはおりますが、その為の費用は掛かかってしまいます。

 

残念ながら中古物件の場合、『建築確認済証』『中間検査合格証』『検査済証』が無い場合の方が多いというのが現状です。
不動産屋さんに確認して、この3点セット若しくは2点セットが無い場合は、契約前に不動産屋さんに『既存住宅状況調査』を依頼するか、持ち主に『耐震診断』を依頼してもらう、若しくは『建築士』に直接相談をされる事をお勧めします。

 

立地と内覧だけで判断されると後々、想定外の費用の発生や、自然災害時に危険を伴う不測の事態に陥る事があるかも知れません。

 

まとめ

建築基準法は昭和25年に制定されて以来、1970年に抜本的大改正をした以後も大きな震災が起こる度に改正を続けてきました。

建築基準法 第1条 には、
「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」
とあります。

自分の土地と建物への規制ばかりの『建築基準法』がなぜ必要なのかを前向きに感じて頂き、より良い物件選びの助けになれば幸いです。

 

一級建築士 小玉恵美