【メダリストには課税される?】(公認会計士/税理士・伊藤弥生)

東京オリンピックが開幕しました。これに続く東京パラリンピックの閉幕まで白熱した競技が続くでしょう。

日本選手のメダル獲得を見るにつけ、思い浮かんでしまうのが税金の話です。

 

日本オリンピック委員会(JOC)と日本障がい者スポーツ協会(JPSA)は、東京オリンピック・パラリンピックでメダルを獲得した日本選手に対し、メダルの色に応じて100万円から500万円の報奨金を支給します。一般に、賞金などは、所得税法上一時所得とされ課税対象となります。しかし、オリンピック・パラリンピック報奨金は特別に非課税とされています。

 

じつは、以前は報奨金に所得税が課されていました。平成4年のバルセロナオリンピックで、当時中学2年生で水泳選手だった岩崎恭子さんが200メートル平泳ぎで金メダルを獲得しましたが、その報奨金に所得税が課され、頑張った中学生から税金をとるのかと批判が起こりました。

その後、平成6年の税制改正でスポーツ振興を奨励することなどを目的としてオリンピックの報奨金は非課税となりました。

 

この話と似ているのがノーベル賞の賞金です。昭和24年に湯川秀樹博士が日本人初のノーベル賞受賞者となった際に、敗戦で社会が疲弊している中、国民に希望を与えたノーベル賞の賞金に課税するのかと議論になり「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」は非課税であると所得税法に明記されました。

このように賞金などは基本的には課税対象ですが、社会的な批判が起こるつど、非課税とされる賞金が個別に定められてきました。

 

ところで、ノーベル賞には6つの賞があるのですが、それらのうち経済学賞の賞金だけは、ノーベル基金からではなく、スウェーデン国立銀行が運営する基金から支払われます。そのため、ノーベル経済学賞の賞金だけは所得税が課されるのですね。今までノーベル経済学賞を受賞した日本人はいませんが、今後日本人初の受賞者が出た時には課税すべきなのか議論になるかもしれませんね。

 

公認会計士・伊藤弥生伊藤弥生