【器用貧乏にならないで】(公認会計士・税理士 伊藤弥生)

こんにちは、クロスオーバーネットワークの伊藤弥生です。

私は公認会計士・税理士として起業支援に力を入れてきました。もう10年以上になります。

様々な個性豊かな経営者の誕生を見てきましたが、時々目にしたのが会社の全ての業務をそつなくこなせるもの凄く器用な経営者です。営業もできるし、現場に出て作業もできる、さらに、様々な資料の作成から、領収書の整理、会計ソフトへの入力まで完璧です。

創業間もない会社は業務量もそれほど多くなく、何よりお金がありません。そのため、給料を払って従業員を雇うことはできず、経営者が1人で全ての業務を行っていることも珍しくありません。

ただし、会社は分業と協業で成長していくものです。創業直後の苦しい状況を抜け、お金に少し余裕ができたら、従業員を雇ったり外注を使ったりして、経営者が経営者本来の業務に集中する必要があります。

経営者本来の業務は売上をあげることと売上をあげるための戦略を立てることです。会社をどこへ向かって進ませるのかを考えるために、日々新しい知識を身につけ、新しい人脈を築いていかなければなりません。

経営者が会社の進む方向を正しく明確に定めないと会社はうまく成長しません。

ある経営者は、起業までに営業、現場作業、経理など会社のあらかたの業務を経験し、どんな業務でも完璧に仕上げてしまう人でした。会社の成長に合わせて営業マンや現場担当者は雇用してきましたが、事務作業に人を雇うなんてお金の無駄だと言って自分で事務作業をこなしていました。

でも、会社の成長とともに増え続ける事務作業に耐えかね、ついに事務員を雇いました。その後の感想は「もっと早く雇うべきでした。早く経営者本来の業務に専念できていたら今頃会社はもっと成長していたはずです。」というものでした。

どんなに器用でも、経営者は経営者本来の業務に専念するのが理想です。そうでないと会社にとっては器用貧乏な経営者となってしまいますね。

公認会計士・税理士 伊藤弥生