アフターコロナの創業について(公認会計士・伊藤弥生)

こんにちは、クロスオーバーネットワークの伊藤弥生です。

新型コロナウィルスによる自粛が始まったばかりの頃、まだ今ほどステイホームが徹底していなかった頃には、金融機関を訪れて起業の相談をする人が増えていたと聞いています。

 

何でも、会社で仕事をしている時間が少なくなり、家でじっくり自分の人生を考える時間ができて、今まで通りに会社に勤め続けるよりも起業したいと思うようになったということだそうです。

 

確かに社会の変化はいろいろ言われています。
すでにアメリカのある大企業は、仕事内容によっては、本人の希望により永久に在宅勤務を認めると公表しています。
そんな会社が増えると、毎朝会社へ通勤するのが当たり前という社会ではなくなってしまうかもしれません。
今までとは、全く違った社会になる可能性もあるということです。

 

この社会が変化していく時に、恐いと思うのか、楽しいと思うのかは、その人の性格によると思います。
ただ、社会が変化していくのなら、それを楽しんだ方がうまくいくことが多いと思います。
変化が嫌だ、昔は良かったなんていくら思っても時間は逆戻りしませんから。

 

そう考えると、今、起業したいと思い始めた人って、変化を楽しいと思える人ってことでもあるのですが、一方で、この起業の話を聞いて、じっくり考える時間ができて、考えてみたところ、会社に勤め続けるより起業した方が良いと思ったというところに危うさも感じています。

 

じっくり自分の人生を考えるのは良いことだと思います。

ただ、会社に勤めるよりも起業の方に魅力を感じるというのは、隣の家の芝生が青く見えるのと同じで、自分がもっていないものの方が良い気がするというだけなのかもしれません。

 

本来、起業する人は、どうしてもこの商売をしたいから会社を辞めるという人だと思います。
つまり、どうしてもこの商売がしたいというのがまずあって、そのためにどうするかを考えていって、辿り着く話なのです。
なんか、自分に会社勤めは似合わないな、なんてところから考え始めて、では起業でもしようかというのは乱暴な言い方になるかも知れませんが、あまりに安易で無謀です。

 

会社勤めの人が聞いて驚く話として、起業すると金融機関からの借入が難しくなるという話があります。
例えば、会社を辞めて起業すると、勤め人の時には簡単に組めた住宅ローンでさえ、組むのが大変になることが多いです。
毎月毎月欠かさずお給料としてお金が入ってくるという立場は、お金に関する信用力として非常に高いものがある、会社勤めの人の信用力って凄く高いということでもあります。

 

これが起業した人の場合、売上を上げない限りお金は1円も入ってきません。
よく言われる話ではありますが、経済的な安定という点では、起業するよりも会社に勤め続ける方がやはり上だと言わざるを得ないのが事実です。

 

起業するなと言っている訳ではありません。
会社に勤め続けるより良さげに見えるから起業でもしようか、なんて考えで会社を辞めると、とんでもない後悔をすることになると思います。

 

言ってしまえば、起業した人の8割以上が失敗すると言っても 過言ではないのです。
だからこそ、周到な準備と絶え間ない努力が必要になります。

今、起業を考えている人は、どうしてもこの商売がやりたい、から考え始めないといけないのです。

 

公認会計士・税理士/伊藤弥生