こんにちは!弁理士の竹口美穂(たけぐちみほ)です。
弁理士の間で、お客様がよく勘違いされているよね、という話題で出てくるのが、自社製品をカバーする特許を取得すると、その自社製品を製造・販売しても他社の特許を侵害がなくなるかということです。
つまり、特許を取ることで、他人の特許を侵害しないことのお墨付きになるかということです。今回は、これについてお話させていただきます。
特許を取れば他人の特許を侵害しないことのお墨付きになるか?
まずは、結論から言いますと、自社製品をカバーする特許を取得したとしても、他人の特許を侵害しないことのお墨付きにはなりません。
特許を取って、特許製品について実施(製造・販売等)をした場合に、他人の特許を侵害することがあります。
なぜお墨付きにならないか?
なぜ特許を取ることが、他人の特許を侵害しないことのお墨付きにならないかという理由を説明します。
まず、技術というものは累積的に進歩するものです。
例えば、Xという物質とYという物質が、優れた胃腸薬になることがわかり、X物質とY物質とを含む胃腸薬の発明をした場合と考えてみましょう。この胃腸薬は、さらに改良が進むはずです。
例えば、X物質とY物質とを8:2で混ぜるとよいことが実験によって判明したり、他にZという物質を微量に混ぜるとよいことが判明したりして、胃腸薬がどんどん改良されていき、より良いものが発明されていくでしょう。
この様な発明は、改良発明といいます。この様な場合には、最初の基礎発明である「X物質とY物質とを含む胃腸薬」の他に、「X物質を80%、Y物質を20%含む胃腸薬」、「X物質と、Y物質と、Z物質とを含む胃腸薬」等のように改良発明についても特許を取得することができます。
もちろん、基礎発明と、改良発明とが別の企業によって開発されている場合には、発明者も権利者も権利毎に異ならせることができます。すると、改良発明の特許の製品を製造販売すると、基礎発明の特許を侵害してしまうことになります。この様な改良発明と基礎発明の関係を「利用」といいますが、基礎発明を「利用」する改良発明についても特許になることが、特許を取得しても他人の特許を侵害しないことのお墨付きにならない理由となります。
まとめ
上述したように、特許を取っても他人の特許を侵害しないことのお墨付きにはなりませんので、自社製品を製造販売するにあたって、他人の特許がないかを自身で又は調査会社に依頼して調査することを提案させていただきます。特許庁では、無料の特許等の産業財産権の検索ツールを提供しており、そのツールを利用して調査することができます。
弁理士・竹口美穂