こんにちは、クロスオーバーネットワークの八木香織です。今回のテーマは、「会社は副業を禁止することができるか」です。
はじめに
皆さんは従業員の副業をどのように考えておられますか。最近の経団連の調査でも80パーセント近くの企業が就業規則で副業を禁止しているそうです。その一方で、経団連のトップが副業容認の発言をし、そして厚労省がガイドラインを出して副業を促進するなど、この一年で副業を取り巻く環境は一変しました。また、スマホなどを使った簡単な副業も数多く登場し、副業に対する関心は今までになく高まっています。
それでも、いやいや従業員にはうちの仕事に専念してほしい。それに就業規則で副業は禁止されているからと思われている経営者の方が多いのではないでしょうか。確かに、経営者の立場からすると、副業により勤務に差支えが出るのではないか、企業秘密が漏えいするのではないかといった心配もあります。
就業規則で副業を禁止できるのか?
先ほど述べた調査では多くの企業が就業規則で副業を禁止していますが、法律的には従業員の副業を禁止した就業規則には意味がありません。裁判では、そもそも就業時間以外に何をするかは個人の自由であり、たとえ就業規則に副業禁止を定めていても、疲労等により本業に支障が出る場合や副業と本業が競業関係になる場合、また副業の内容が会社の信頼を失墜させる場合等でない限り、副業を理由とする処分は無効とされているのです。つまり、たとえ就業規則で副業を禁止していても、副業をしたという理由だけでは、その従業員に副業をやめさせたり、また処分したりすることはできないということです。
多くの人が副業を持つようになるこれからの時代、就業規則でただ副業を禁止することは、かえって不要なトラブルの原因となり、なにより、従業員が隠れて副業をするようになったり、従業員の士気の低下にも繋がっていくのではないでしょうか。
どのように就業規則を定めたらいいのか?
しかし、従業員が副業をすることにより、企業が不利益を被ることは事前に防ぐことが必要です。どのような就業規則を定めておけば、防げるのでしょうか。改正された厚労省のモデル就業規則では以下のように定められています。
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労働提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信頼を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
要するに、副業を認める代わりに、届出を義務付けることで企業が従業員の副業を把握し、そして企業が不利益を被る場合は禁止できるようにする、というものです。このような就業規則を定め労使間で確認しておくことにより、経営者は、企業の不利益になるような副業を禁止することができ、従業員もどのような副業なら問題なくすることができるのか判断することができます。
まとめ
今の社会情勢において、従業員に副業を認めることには、従業員のスキルをアップさせ、勤労意欲を高め、また対外的な企業のイメージを良くし、優秀な人材を確保することにもつながっていきます。副業を認めることによるデメリットを減らし、メリットを企業力アップの要因とするためにも、現状に即した就業規則を定めることは重要なのです。
最後に、労働基準法において、複数で雇用されている場合は通算することとされていることには留意が必要です。この点については、また次の機会に詳しくお話します。
弁護士 八木香織