こんにちは、クロスオーバーネットワークの八ツ元優子です。
今回は、「契約」について、書かせてもらいます。
契約というと、とっつきにくいイメージがあるかもしれません。
しかし、
・アパートを借りて住んでいる人は、賃貸借契約を締結しています。
・JRや私鉄を利用するのは運送契約です。
・本屋で本を買うのは売買契約です。
というように、契約は、意外にも、日常生活に溢れています。
そんな日常生活にあふれる「契約」について、今回は、
①契約って何?
②契約ってやめられるの?
③契約に契約書は必要?
いう順で書かせてもらいますね。
契約って何?
契約とは、一般に、「対立する2個以上(2権利主体)の意思表示が合致して成立する法律行為である」と定義されます。
客が1万円の服を買うという売買契約の例でいうと、
買主である客の「この1万円の服を買いたい」という意思表示と売主である店の「この服を1万円で売りたい」という意思表示が合致して、売買契約が成立します。
売買契約が成立すると、売主である店には服を引き渡す義務、買主には1万円を支払う義務が発生します。
皆さんが店で買い物をする際、以上のように、売買契約が成立し、その売買契約に基づく義務の発生があり、それに基づいて、お店のレジで1万円を支払って服を受け取っていることになります。
契約ってやめられる?
結論から言うと、原則として、契約成立後は契約をやめることはできません。
先ほどの例でいうと、売買契約が成立すると、売主である店には服を引き渡す義務、買主には1万円を支払う義務が発生します。
売買契約成立後に、「やっぱり、やーめた」と契約をやめることはできません。買主は、「買う気がなくなったので、1万円を支払うのやめます」と言えない、ということになります。
では、契約をやめることができなくなる時点=契約が成立する時点はいつになるのでしょうか?
先ほどの例でいうと、売買契約が成立するのは、売主の「この服を1万円で売りたい」という意思表示と買主の「この服を1万円で買いたい」という意思表示が合致した時です。では、いつ意思表示の合致があったと言えるのでしょうか?店に商品として1万円の服を陳列していることが売主の「この服を1万円で売りたい」との意思表示です。そして、買主がその服を店のレジに持っていった行為が、「この服を1万円で買いたい」という意思表示であり、売主・買主の意思表示が合致した瞬間です。
ただ、実際に、客がレジに商品を持っていって、「やっぱりやめます」と言った場合、店員さんは、(残念そうな顔はされると思いますが、)「そうですか・・・」と言ってくれますよね?!ここが法律と社会の乖離です(笑)。
純粋に法律論を振りかざすと、店員さんは、「もう、売買の意思表示は合致しています。やめることはできません」と言えるというのが、弁護士としての私の見解です。
契約に契約書って必要?
これも結論から言うと、契約に契約書は不要です。
書面がなくても、口頭で契約が成立します。
コンビニでの買い物、デパートでの靴の購入はもちろん、マイホーム購入などの不動産の売買契約にも契約書は不要です。
「うそ?!」「マイホーム購入の際、契約書にサインしたし、実印での押印もした」「実印の印鑑登録証明書まで持っていった!」と思われた方もいらっしゃると思いますが、法律上、契約書がなくても契約は成立します。
では、なぜ、契約の際、契約書を取り交わすのでしょうか?
契約書は、「契約の成立」のためではなく、「契約の成立及びその内容を立証する」ために作成します。
立証とは、証拠により事実を証明することです。
実際、契約書が必要になってくるのは、契約の一方当事者が契約の成否やその内容を争った場合です。
その場合、契約成立やその内容の事実を証明する一番強力な証拠が契約書です。
契約の成否やその内容について争いが勃発して当事者同士で争いを収束できない場合、最終的に裁判になることが考えられます。裁判では、証拠としての契約書の存在は重大です。契約書があれば『契約は成立した』『買主は代金としてこれだけ支払え』という判断に傾きやすくなります。
要するに、契約書は、契約の成立及びその内容を立証するためのもので、これにより、契約トラブルを未然に防止したり、契約トラブルの解決に資する効果をもちます。
最後に、平成17年4月1日以降の保証契約については、書面によらないものは無効とされることとなりました。ですので、平成17年4月1日以降の保証契約には、「契約成立」のために書面(契約書)が必要となることを付言しておきますね。
まとめ
以上、契約について、お話させて頂きました。
・契約は慎重に!(契約成立後は原則やめられません)
・契約トラブル防止・解決のため契約書は重要!(契約成立には契約書は不要だけど)
という2点を、覚えておいて頂けると、ブログを書いた甲斐があります。
弁護士 八ツ元優子