「女性起業家インタビュー」vol.15 株式会社loco y tanto 代表取締役 阪上愛莉さん

財務省近畿財務局・京都財務事務所×ブルームマネジメントのコラボ企画、「女性起業家インタビュー」です!

プロフィール
阪上 愛莉 さん
株式会社loco y tanto 代表取締役
2002年京都生まれ。早稲田大学在学中の2024年に株式会社loco y tantoを起業。犬を軸とした事業を展開。大学ではビジネスコンテストへの出場やスタートアップ企業でのインターンシップを経験し、起業に向けて準備を進める傍ら、動物保護活動にも参加し、譲渡会や講演会を開催、募金活動などに取り組む。また、バックパックで20カ国を巡り、各国の犬と人の関係性について知見を深めながら多様な価値観に触れる。現在、犬と人がよりよく共生できる社会の実現を目指し、西陣織や丹後ちりめん、京鹿の子絞りなど京都の伝統工芸で仕立てる犬用晴れ着・小物ブランド「Miyako」を展開している。
「第14回京都女性起業家賞」トーマツ京都事務所賞および日本政策金融公庫賞ダブル受賞(2026)
「女性のための起業プログラム」オーディエンス特別賞受賞(2026)

公式ウェブサイト:loco y tanto

犬も人も、より毎日を楽しめる世界を目指し、行動!行動!行動!の日々です

−起業のきっかけをお聞かせください。

起業をしようと思ったのは、小学生の頃です。幼い頃から、会社を経営していた父の話を聞いていました。実際に起業へ踏み出したきっかけは、大学3年次、幼い頃から一緒に育った愛犬が亡くなったタイミングです。大切な犬の死を目の前にして、「次は自分が犬を支える側になりたい」という想いを持ち、起業に至りました。

犬も大切な家族ですもんね。

はい!単なるペットではなく「家族の一員」だと思っています。犬と人は、古代から良きパートナーとして共生してきました。現在でもその関係は変わらず、犬は私たちを、癒し以上の温かい気持ちにさせてくれます。「犬とその家族が、もっと思い出に残る毎日を過ごしてほしい」という想いと「京都の伝統を次世代に伝える」というミッションを掛け合わせて、京都の伝統工芸から仕立てる犬用晴れ着と小物「西陣織ドッグウェアブランドMiyako」を展開しています。

なぜ、伝統工芸を使った商品を展開しようと思ったのですか?

京都で偶然の出会いがあり、西陣織の帯会社さんと知り合いました。お話を伺ううちに後継者不足等により西陣織産業が規模を縮小している状況などを知り、「後世に残していきたい京都の技術を、自身の好きな犬というジャンルと組み合わせることで貢献できるかもしれない。」と思ったことがアイデアの原点です。そこから西陣織を使った犬用の洋服やリボンを作り始めました。

西陣織のほかに丹後ちりめんや京鹿の子絞りを活かした商品も展開しておられますね。なにかきっかけがあったのでしょうか?

お客様の声から生まれました。西陣織の硬く丈夫な特性を活かして商品開発をしてきたのですが、「もう少し肌触りが柔らかいものが欲しい」「もっと簡単に着せられたらいいな」などと声が寄せられ辿り着きました。新しい素材を導入した結果、デザインの幅が広がり、丹後ちりめんネクタイ、京鹿の子絞りスヌードなど洋服以外の小物商品も開発できるようになりました。本日着用している「着物ドッグネクタイ」は、犬と飼い主がペアでつけられる商品です。

−犬と飼い主が一緒に使える商品、とても素敵ですね!普段商品はどのような方が購入されますか?

インバウンドの方々に気に入っていただいています。「日本の伝統工芸」「手軽に購入できる価格帯」「お土産にできる」このあたりが響き、購入してくださっているようです。逆に日本の方にとっては、西陣織は少し敷居が高いようで、そのような概念を崩していけたらいいなと思っています。

西陣織は豪華な美術品として始まったのではなく、機能性と美しさを兼ね備えた「実用品」として発展してきたと言われていますね。改めて西陣織に親しみを感じてもらう、日常使いしてもらうために取り組んでいることはありますか?

まずは商品の認知を上げることに取り組んでいます。マルシェに出展する、SNSの投稿を増やす、営業に行くなど、とにかく行動!行動!行動です!犬の散歩をしている方に声をかけ実際に試していただいたり、百貨店で着用撮影会を実施したり、色々な場所に飛び込んで、お客様の生の声を聞いて改善点や今後の方針を見出し、着実にお客様に届く物に近づけていく。このやり方が、私にとって一番効率的な方法だと思っています。

−学生時代に起業されたことも含めて、行動力が素晴らしいですね。良き相談相手がいらっしゃったのですか?

起業当初は、相談相手はいませんでした。もともと人に相談するタイプではないのですが、今では、どんなに小さなことでも専門家や家族、友人など、様々な立場の人に相談することを意識しています。専門家は私個人のことは知らないけれどビジネスのことは知っている、一方で家族はビジネスのことは知らないけど私個人のことは知っているので、相談すると全く違う角度からアドバイスをいただけます。こうした多角的な意見を取り入れることで、物事を平面ではなく立体で捉え、より良いアプローチに繋げられると思います。

ご家族から反対はなかったそうですね。お母様は資金も援助してくださったとか。

はい、応援してくれています。初めは自己資金で活動していたのですが、起業1年後、母と銀行から借りることになりました。家族からアドバイスをもらうと、知らず知らずのうちに無理をしていたな、やらなくて良いことを頑張り過ぎていたなと気付かせてもらえます。

有難いご存在ですね。最初から法人として起業されていますが、ご苦労はありましたか?

法人だから大変だと感じることはあまりありませんでした。長期的に事業をスケールさせ、同じ軸で継続していくことを前提に考えたときに、法人としての体制を早めに整えておいた方が良いと思いました。と言いつつ、なんだかんだ私が形から入るタイプだからだというのもあると思います。結果として社会的信用が高まり、取引先や支援者の量も質も高く、有難く感じています。

それよりも創業してからの方が大変ですね。商品が売れなくてもお金は出ていきますし、これは経験不足の一言に尽きるのですが、最初は相手の意図を十分に汲み取れなかったり、自分の考えをうまく伝えられなかったりする中で、想定と違う形で物事が進んでしまうこともありました。失敗を繰り返すうちに、「犬のために何ができるか」という自分の軸に正直になることが、結果的に相手にも負担をかけないというコツが掴めてきました。今も丁寧なコミュニケーションを心がけています。

また、何が起こっても越えられない壁はないので、ただひたすら耐えることが大切だと思います。当時は辛くても、後から思い返したら学びや笑い話になっている場合がほとんどです。そんな時に成長を実感して、逆にトラブルが貴重な経験になったと思えます。

前向きに経験を積んでこられた結果、「京都女性起業家賞」ダブル受賞という輝かしい今に繋がっているのですね。受賞前後で変わったことはありますか?

有難いことに金融機関さんなど周りの反応が少し変わったように思いますが、なにより自分自身の気の引き締まり度合が変わりました。等身大で、今まで以上にしっかりと頑張りたいです!

注目を集めている今が凄くチャンスですよね!今後どのようなことに挑戦したいですか?

認知を上げ、商品を増やし、ブランドを確立して、実店舗を持ちたいです。商標・知財関係など守りの体制も強化しながら、観光地のお土産屋さん、高級ホテル、セレクトショップなどに商品を置いてもらうべく営業にもさらに力を入れていきたいです。

軌道に乗ったら、犬のトレーニングが100倍楽しくなるという趣旨で開発した「tanto」というアプリに力を入れたいです。日本にはまだ犬と一緒に行けるお店や施設が少なく、増やしていきたいのですが、そのためには、犬が好きな人・犬が苦手な人の双方が心地よく過ごせるような配慮、飼い主のマナー・犬のトレーニングが欠かせないと思っています。日本には犬をトレーニングさせる文化が浸透していないので、飼い主側にトレーニングするメリットを提示できるようなプロジェクトを手掛けていけたらいいなと思います。会社に犬を連れて出勤、なんてことが出来たら嬉しいですよね!あと、狂犬病0、殺処分0の世界を実現していきたいです。

これから起業する人へ、起業する前にやっておくべきことはありますか?

補助金や支援機関は、事前にしっかり調べておいた方がいいと思います。創業融資など、起業するタイミングでしか活用できないものもあり、私はこの点について準備ができておらず後悔しました。お金をかけるほど良い物・サービスができるので、もっと上手にお金を使えたらよかったなと思います。また、想像以上に体力を使うので、エネルギーは満タンにしておいた方がいいと思います!

−最後に、これからの時代に、起業家を目指す女性にメッセージをお願いします。

大それたことは言えませんが、私は、起業して後悔したことは一度もありません。皆さんも、少しでもやりたい気持ちがあるなら、思い切って一歩踏み出してほしいです。

−ありがとうございました。

今回は、近畿財務局の福嶋さん、大久保さんにもご参加いただき、インタビューを行いました!

阪上さんに一問一答

経営する上で一番大切なことは?
根気

座右の銘
The people who are crazy enough to think they can change the world are the ones who do.

京都のおすすめスポット
美山・あだし野念仏寺

(聞き手:近畿財務局京都財務事務所 福嶋氏 大久保氏、ブルームマネジメント 伊藤

株式会社loco y tanto
公式ウェブサイト:loco y tanto