「女性起業家インタビュー」vol.13 株式会社祇園ビール 代表取締役 岡田綾子さん

財務省近畿財務局・京都財務事務所×ブルームマネジメントのコラボ企画、「女性起業家インタビュー」です!

プロフィール
岡田綾子さん 
株式会社祇園ビール 代表取締役
京都府京都市出身。
幼稚園教諭、保育士として従事した後、ワーキングホリデー制度を利用し、オーストラリアへ渡豪。現地の文化に触れ、保育、観光業、農業、飲食業など多様な職を経験する。
帰国後は、京都の老舗料理店や日本酒専門店などで接客や経営のノウハウを身につけ、食文化を通して人を笑顔にする喜びを実感し、これまでの経験を多くの喜びにつなげたい、地元京都に貢献したいと思い、2023年3月、クラフトビールパブ『Ale GION BEER KYOTO』をオープン。

公式ウェブサイト:Ale GION BEER KYOTO

起業前においては、「資金の確保」と「人とのつながり」が重要だと強く感じています。

−起業のきっかけをお聞かせください。

コロナ禍による悲しみを、喜びに変えたいと思ったことがきっかけです。生まれ育ち、従事していた京都に恩返しがしたい。自分の作ったものを世に出したいと思っていた頃、クラフトビールの醸造所と出会いました。クラフトビールが持つ多様な特徴を生かし、社会問題解決、観光誘致、外食産業の活性化、ひいては京都の活性化につなげたいと強く思うようになりました。

−なぜ、クラフトビールで起業しようと思ったのですか。

1994年に酒税法が一部改正され、ビールの製造免許を取得するための年間最低製造量が、それまでの2,000キロリットル以上から、60キロリットル以上に大幅に緩和されました。この改正により、スモールブルワリー(小規模な醸造所)が増え、私自身もクラフトビールの製造に挑戦したいという夢が芽生えました。

−夢の詰まったお店について教えてください。

オリジナルビールを中心に、10種の生樽からそそがれるクラフトビールが人気です。 クラフトビールで新しい価値を創造していくことを目標に、農家の抱える課題解決の手助けとして、過剰在庫や廃棄食材をアップサイクルした自社オリジナルビールの開発、販売を行っています。

−オリジナルのクラフトビールを展開されているんですね。

京都産の食材にこだわり、過剰在庫や廃棄予定などの規格外食材をおいしく生まれ変わらせています。廃棄をうみださない『ゼロウェイスト』を目指し、循環される社会をつくりだし、地元京都に貢献することを理念にしています。

−農家の方も喜ばれているのではないですか。

はい!自分たちの作ったものが美味しい商品に変わることを大変喜んでいただいています。

−素晴らしいことですね。こだわりのビールを求めて来店されるお客様も多いのではないでしょうか。

有難いことに、当店でしかお飲みいただけないビールを目指して訪ねてくださる方は少なくありません。ビアツーリズムと言われるビールを目的に旅行を楽しまれる国内外のお客様が来店され、旅行客同士の情報交換なども盛んに行われています。

特別な商品を求めておられるお客様は、その土地の楽しみ方の情報も求めていることが多く、店主からの観光地の紹介だけでなく、旅行客や地元住民との関わりを持てるように、たまたま同席したお客様同士を繋ぎ、クラフトビールをのみながら、リラックスして情報交換・異文化交流を楽しめる、京都のハブのような店舗を目指しています。

−お店の雰囲気作りで注意していることはありますか。

店主からお客様へ積極的に話しかけるようにしています。 また、お客様同士がコミュニケーションしやすいように、お客様の座る位置も考えてご案内しています。旅行そのものも楽しいけれど、京都のことを話しながら過ごす時間も魅力的だと、嬉しいお声をいただいています。

−お客様からお喜びの声が寄せられるお店となりましたが、創業を決めた時のご家族の反応はいかがでしたか。

家族は私自身の性格や行動力を理解してくれていたため、そっと見守りながらも、喜んで応援してくれました。

−ご家族以外にも相談されましたか?

はい!たくさんの相談相手がいました。経営者になるために、幅広い分野の専門家の方に出会う場やセミナーなどに参加し、人とのつながりを大切にしていました。

また、日頃からアクティブな行動をしていたため、幅広い分野の職業や国内外の広い地域の知人友人、経営者との関わりがあり、多くの方に支えられていることに日々感謝しています。 後に、複数の親しい友人から、「当時とても心配で不安に感じていた。突き進んでいく姿に応援するしかなかった」とも言われ、見守っていてくれたことを嬉しく思います。

−岡田さんのお人柄ですね。人とのつながりを作るために、どのような工夫をされていますか。

クラフトビールのイベントなどに足を運んだり、同業者のネットワークを活かしたりしています。クラフトビール業界の横のつながりも良き相談相手です。普段はライバルですが、コラボをするなど共同することもあります。

−創業を決められてからは、必要な資金はどのように調達しましたか。

社会人になってから、たくさんというわけではありませんがずっとこつこつと貯蓄していました。初めから、起業が目的、というわけではありませんでしたが、自分で何かしたいと思った時のために必要になるであろう資金を少しずつでもしっかり蓄えられるようにと常に考えていました。

−日頃の小さな積み重ねが大きな一歩となったのですね。

はい。その貯蓄を資本金の一部にし、女性のための起業プログラム『京都“ことそら”プロジェクト』を受講したことをきっかけに、たくさんの方々のとのご縁が結ばれ、金融機関のご支援もいただき、起業に必要な資金を調達することができました。プログラムに参加することで考えも整理され、勉強になりました。

−ズバリ起業する前にやっておいて良かったと思うことはありますか。

やはり資金の確保と人とのつながりを作っておくことが大切だと思います。やりたいことがあっても、どれだけ才能があっても、資金がなければ実現することは難しいと思います。

また、人は人との関わりによって社会が生み出されるものなので、資金があっても人とのつながりがなければ、成り立たないことが多いと思います。

−世界が広がったんですね。

とにかく外に出て経験することが大事だと感じています。いろいろな経験は視野が広がり、考え方や捉え方、対応力も変わったように思います。

−起業してからの悩みや課題はございますか。

人材育成や人員確保はまだまだ大きな課題です。企業の成長には、重要な課題ではありますが、行政機関や金融機関、専門家、常日頃から応援してくださる常連のお客様の助言や手助けによって、乗り越えていきたいと思います。

また、クラフトビールの樽は頻繁に入れ替え作業があります。約20キロ弱の重さがあり、持ち運びだけでもかなりの重労働です。女性と男性は身体的にも心理的にも違う生き物ですので、同じ仕事内容でも体力面の違いを感じることがあります。

−個人事業ではなく株式会社という形態を選ばれたのは、なぜですか。

現在、弊社のオリジナルビールは製造を委託していますが、自分の力で醸造したビールを提供したいという想いがあり、将来的には醸造所を設立したいと考えています。自社醸造になればブランドの独自性が持つことができるため、その点も魅力的だと感じています。

醸造所設立を視野に活動しているため、信用度を高め、自身の発展の決意を形に表すため、初めから株式会社を選びました。

−醸造所での自社製造の夢もお持ちなんですね!

社会貢献をしていきたいです。 ビールを造る過程で出る麦芽かすもスーパーフードと言われているので、それを使った食品開発もできたら良いなと思います。

−最後に、これからの時代に、起業家を目指す女性にメッセージをお願いします。

志を持って起業することは、覚悟と勇気の証だと思います。創業は簡単ではなく、体力面や精神面で想像以上のダメージを受けることもあります。

私の場合、起業に至るまで多くの時間を使い、様々な経験を経てきました。覚悟が決まってからは、自然に進んでいき、思い通りのことや予想外の出来事が起こりながら、形になっていきました。今やっとスタートラインに立てたところで、課題を抱えながら未知の未来のゴールを模索中です。

これから起業を目指す方には、たくさんの経験を通じて視野を広げることが大切だと思います。すべての出来事には意味があり、どんなことにも無駄はないと信じています。それがいつか点と点で結ばれ、小さな力でも積み重なれば強大な力になると思います。

−ありがとうございました。

今回は、京都産業大学の菅原先生、倉本先生、そして京都産業大学生の能瀬さんにもご参加いただき、インタビューを行いました!

岡田さんに一問一答

経営する上で一番大切なことは?
決断力

座右の銘
点滴穿石(てんてきせんせき)

京都のおすすめスポット
Ale GION BEER KYOTO

(聞き手:近畿財務局京都財務事務所 上田氏、京都産業大学 菅原氏 倉本氏 能瀬氏、ブルームマネジメント 伊藤

株式会社祇園ビール
公式ウェブサイト:Ale GION BEER KYOTO