【起業時の選択 個人or法人 手続の違いは?】(白波瀬未海)

こんにちは!クロスオーバーネットワークの白波瀬未海です。

 

私は司法書士として、登記を中心とした法務手続に関わらせていただくことが多いので、今回は、そういった観点から、起業における個人と法人との違いについて書いてみたいと思います。

 

登記手続き以外にも実際には、そのほか税金・保険・雇用等に関する届出、行う業種によっては許認可が必要となる場合もありますが、ブルームマネジメントにはそれぞれの分野を専門とするメンバーがいるので今回は割愛させていただきます。

 

開業のハードルは?

 

伊藤弥生先生が「法人と個人事業主どっちを選ぶべき?」でも書かれていたように、個人事業主として商売を始める場合、必要な手続きは、税務署に「個人事業の開業届出書」を提出する。これでひとまずはOKです。

 

だから、個人事業では思い立ったその日に開業が可能なのです。

 

思い立ったその日に開業!そんなのありえないと言われると思いますが、法人との手続きの比較のため、少しおおげさに書いてみました。

 

では、次に法人の手続きについて。
ここでは最も一般的な株式会社を例にとって考えてみます。

 

会社は「登記」をしてはじめて誕生するため、個人事業主と同じように、今日からはじめよう!と思ってもそう簡単ではありません。

 

まず会社設立を決めたら「定款の作成」をしなければなりません。
定款とは、「会社の憲法」と例えられるように、会社の基本ルールを定めたとても重要なものです。
定款に記載する事項は、商号(会社名)・目的・本店の所在地・株式・役員・事業年度などで、法律で定められています。

 

そうして作成した定款は、登記の前に公証役場に持っていき、「公証人の認証」を受けます。これは定款が法律に従って適法に作成されたということを保証してもらうような作業です。

 

そして出資金の払い込みが完了すれば、いよいよ法務局での登記申請へと進みます。

 

こうしてみると、個人事業と比べてしなくてはならないことがたくさんあり、その分手続きが煩雑になるということがわかっていただけるのではないでしょうか。

 

手続きに要する費用が全然違う!?

 

さらにもう一つ、個人・法人で大きな違いがあるのが開業に要する費用です。

個人事業の場合は、登記手続きが不要のため、開業に要する手続きに費用はかかりません。

 

株式会社を設立する場合、定款の印紙代4万円(ただし、電子申請の場合は不要)、公証人の認証料約5万円、設立登記にかかる登録免許税15万円(資本金の額により異なります)などがかかります。
つまり実費だけでも20万円以上必要で、登記手続きを司法書士に委任された場合は、加えて報酬がかかります。

 

なぜ法人だけこんなに大変なの!?

 

法人として事業を行い取引するうえで、法人は目に見えませんので、第三者からすれば法人の誰が責任者で、どんな会社なのか知る必要があります。

 

その見える化の役割の一部が「登記」となります。登記とは取引先にとって法務局お墨付きの「会社案内や履歴書」のようなものとイメージして下さい。

 

また法人は、個人事業より株主や債権者などの利害関係者も多く、事業規模も大きくなる傾向があります。比例して何か問題が生じたときの影響も大きくなります。

そのため、設立後も様々な法律上の義務が課されており、いろいろな手続きが必要となります。

 

つまり法人を経営するということは、それだけ社会的責任も重いということなのでしょう。

 

法人で起業された場合は、経営者にとって負担とならないよう、また適正な手続きができるよう上手に各分野の専門家をご活用くださいね。

 

結局どっちがいいの?

 

比べてみると手続き面では、個人事業の方が圧倒的に楽です。売上も少なく一人で事業をしているうちは個人事業でいいかもしれません。

反対に法人は手続きが煩雑でいろいろな法的コストが発生します。その分、一般的に社会的信用が高いと考えられています。

 

どちらがいいかは、一概には言えないと思います(ごめんなさい)

 

提供するサービスの内容、共同経営者の存在や出資者の存在、想定する事業規模や事業主の考え方、その他税務をはじめとするさまざまな検討が必要となるからです。

 

ただし、個人事業からスタートされる方も最終的には法人化を目指されると思いますので、当面の資金繰りに余裕があるならば覚悟をもって法人での起業はいかがでしょうか?

 

ここがポイント!

  1. 個人事業の場合は、起業は簡単。
  2. 法人は社会的信用があるが、責任も重い。
  3. 法人を選ばれた場合は、専門家をうまく活用してください。

 

司法書士 白波瀬未海