こんにちは、クロスオーバーネットワークの小玉恵美です。
今回は「インスペクション」についてお話しさせて頂きます。
その前に、前回「欠陥住宅」のテーマで書かせて頂いた内容の「瑕疵保証」について復習いたしますね。
『新築物件』の場合、瑕疵を保証してくれるのは「事業者」で保証期間は「10年」
『中古物件』の場合、瑕疵を保証してくれるのは「宅建業者」で保証期間は「2年」
どちらの場合も、売主は「業者」です。
ところが、実際に中古物件の売買では仲介は「宅建業者」でも売主は「個人」の場合がほとんどですよね。(個人間売買)
その場合には「瑕疵保証」はどうなるのでしょうか。
中古物件の瑕疵保証はどうなっているの?
民法上では「買主が事実を知ったときから1年」とされていますが、消滅時効の規定の適用があります。引渡しから十分な時間が経過すると売主に瑕疵の保証はしてもらえません。
また、売主が瑕疵担保責任を負わないという「特約」を付ける事も出来ます。
瑕疵の責任については「不動産売買契約書」に記載されておりますし、契約時に宅建士さんからも説明がありますのでしっかりと確認しておいてください。
一般的には3か月以下となっているケースがほとんどです。
瑕疵について不安がある物件を購入されるのであれば、契約前に不動産業者さんと瑕疵担保の期間についてもきちんと話をしておく方が良いでしょうね。
「建物状況調査」インスペクションとは。
平成30年4月1日より、宅建業法が改正され既存住宅の取引において、不動産業者との媒介契約を結ぶ際には「建物状況調査」のあっせんの有無を問わないといけなくなりました。
この「建物状況調査」とは何か?
国土交通省が定めた講習を修了した「建築士」が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分、及び雨水の侵入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための調査です。
つまり、購入を検討する物件が見つかった際に不動産屋さんから、「瑕疵担保責任」で保証される部分の調査を「建築士」に行ってもらいますか?という事を聞かれます。
また、この国土交通省が定めた講習を修了した「建築士」の事を、「既存住宅状況調査技術者」と呼びます。
「建物状況調査」は誰に依頼するの?報告は?注意点は?
では実際に「建物状況調査」を行おうとするとどうなるのでしょうか。
不動産業者と媒介契約を結ぶ際に、「建物状況調査」というものがありますがされますか?と聞かれます。
「やります。」となると、不動産業者が取引のある「既存住宅状況調査技術者」である建築士に直接依頼するか、「既存住宅状況調査技術者」を斡旋してくれる団体に依頼します。
後日、依頼を受けた「既存住宅状況調査技術者」は依頼物件の調査を行い、その報告書を「宅建士」に提出します。
提出された報告書を、「宅建士」が重要事項説明時に説明します。
そして、売買契約締結の流れとなります。
さて、この流れの中で注意すべき点があります。
まず実際には、「建物状況調査」の依頼について不動産屋さんからはかなりサラッと聞かれますし、あまりおススメもされません。
新しい法律ですから、あまり浸透していないので少し敬遠されている印象です。
なにより問題なのがタイミングです。
よくあるのは、買主と不動産業者との媒介契約の締結自体が「売買契約当日」であること。
そうなると当然、調査を依頼するタイミングすらありません。
契約を検討する建物に「建物状況調査」が必要だと思われるのであれば、事前に不動産業者に伝える事が必要となります。
また、報告書はかなり簡潔に書面1枚にまとめられますので、調査に同行させてもらい、「既存住宅状況調査技術者」である「建築士」から直接アドバイスを受けるなどすると良いかもしれません。
調査のメリットは?
購入前に調査を行う事で、安心して購入の判断をする事が出来ますし、購入後のリフォームやメンテナンスなどの予定を見込んだ取引が可能となります。
コンディションが分からないまま購入し、後に思わぬ出費が発生する事も良くあります。
不動産業者は建物の売買の専門家ではありますが、建物自体の専門家という事ではありませんので、建物の専門家である「建築士」に意見を聞くことは有効な手段だと思います。
ただし、給排水管や設備などは調査委対象となっていませんのでオプション調査となります。
費用はどれくらい?誰が払うの?
調査にかかる費用は定額ではありませんので、調査実施者によって異なります。
「既存住宅状況調査」の相場としては6万円~10万円程度です。
床下シロアリ調査や、給排水管、耐震基準などのオプション調査が必要な場合は追加費用が発生します。
費用は、依頼者(買主/売主)が支払います。
費用設定が自由ですので少し不安を感じる場合は、各都道府県に建築士会や建築士事務所協会など、建築士を斡旋してくれる公益法人がありますので、そちらから斡旋してもらうのもお勧めです。
既存住宅売買瑕疵保険との関係は?
さて、冒頭に出てきました「中古住宅」の「瑕疵保険」について。
「個人間売買」の場合、売主の「瑕疵保険」義務は絶対ではありませんでしたよね。
では買主が「瑕疵保険」をかければよい!では、買主の負担が大きくなってしまいます。
そこで、この「既存住宅状況調査」が使えます。
建物の調査結果が加入条件を満たしていれば、調査を実施してくれた「建築士」が所属する「建築士事務所」に別途保証の申込を行う事で、「既存住宅売買瑕疵保険」に加入してもらう事が出来ます。
つまり、購入した住宅に瑕疵が見つかった場合「建築士事務所」が補修をしてくれます。
更にはこの「建築士事務所」が倒産していたとしても「保険」で補修が可能です。
(保険の種類によって、保証金額と期間が異なります。)
ただし、調査実施者である「建築士事務所」が「住宅瑕疵担保保険法人に登録された検査事業者」であることが必要です。
この点は、公益社団法人からの斡旋でない場合は確認が必要となりますので覚えておいてくださいね。
まとめ
中古物件の購入は、新築物件よりも注意を払う必要があります。
建築基準法も年代ごとに基準が改正されています。
建設当時は適法であった建物も、現在では不十分とされてしまうケースが多くあります。
その中で、現在における建物のコンディションを知る事はとても重要な事ですし、何かあった時の為に保険をかける行為に、「やり過ぎ」はないと思います。
売買のプロと、建物のプロの意見を上手く活用して、より良い物件に安心をプラス出来れば納得の選択が出来るのではないでしょうか。
一級建築士 小玉恵美