【株主と取締役のちがいって?】(八木香織)

こんにちは、クロスオーバーネットワークの八木香織です。今回のテーマは、株主と取締役の違いについてお話します。

はじめに

株式会社設立に関して、以前のような最低資本金制度や複数人の取締役の選任などのハードルが法律改正によってなくなり、今日では、起業時に株式会社を設立することも珍しくなくなりました。

 

そのような会社の多くは、企業した人が自分でお金を出して、運営も自分でするというケースがほとんどだと思います。このように株主イコール取締役であれば、当然、何でも自分で決めて行うことができるわけですが、法律上は株主、取締役それぞれの役割が区別して定められています。

そこで今回は、一人で会社を設立した時に知っておきたい株主と取締役の違いについてお話します。

 

 株主と取締役

まず、株主と取締役の役割についてお話します。

株主とは、会社に出資し、代わりに株式を受け取った人のことを言います。いわば会社にお金を出している、会社の所有者です。

 

株主は会社のオーナーであるわけですから、その権限は絶大です。後述する取締役の選任解任や会社の経営方針は、株主全員による会議である株主総会で決定することになります。

 

一方、取締役とは、実際の会社運営の責任者です。取締役は株主総会で選ばれ、株主総会の決定に従って、会社の経営責任として実際の会社運営を取り仕切ります。

 

 一人会社でも株主総会を開く?

一人会社の場合、株主も自分、取締役も自分ですから、株主総会なんて開かなくてもよいのではと思えるかもしれません。しかし、たとえ一人会社でも株主総会は開かなくてはいけませんし、そしてその内容を議事録として残しておく必要があります。

例えば、自分の役員としての任期が満了して再任する場合などは、たとえこれまで通り自分が続けるにしても登記する必要があり、その際に、必ず株主総会議事録が必要となります。また、役員の報酬についても、議事録に残していないと損金計上が認められない場合もあります。

 

とはいえ。もちろん一人ですから、大げさに考える必要はありません。事業年度終了から法人の確定申告の期限である2か月以内に、それこそ喫茶店ででも、自分で決めたことを議事録として残しておけばいいだけのことです。

 

まとめ

最後に今まだお話した株主と取締役の違いに関連して、資金調達のお話しをします。

資金調達には借り入れる場合と新たに株式を発行する場合があります。借り入れる場合には会社の事業活動の一つにすぎません。しかし、新たに株式を発行し自分以外の人から資金を調達した場合には、会社の運営に大きくかかわってくることになります。

新たに株主となった人には、出資比率に応じて当然に一定の株主としての権利が生じることに注意してください。例えば、発行している株式の50パーセント超を自分以外に保有されれば、たとえ自分が会社を設立したといっても、取締役の選任解任を含め、会社の意思決定はすべてその株主が決定できることになってしまいます。

と、最後に企業の乗っ取りのような大袈裟な話になりましたが、たとえ一人会社でも株式会社である以上会社法の規定に従って運営されることになるわけですから、株主の権限や取締役の責任を理解して運営していくことが大切です。

 

弁護士 八木香織