「労務トラブルでよくある事例。経営者が気をつけておくべきこと」(社会保険労務士・八幡順子)

こんにちは!クロスオーバーネットワークの八幡順子です。

どんな立派な社長さんでも、「はじめて人を雇う」という経験を、人生のどこかでしています。はじめての経験ですから、最初はうまくいかないかもしれません。
そんなとき、泥沼の争いにならないためにできることがあります。

 

お互いに「はじめて」の経験

 

ある人を採用しようとするとき、採用する側もされる側も、それははじめての経験です。
採用側は、
・この人は真面目に熱心に働いてくれるだろうか?
・他のスタッフと仲良く調和してくれるだろうか?
・身体やメンタルの状態は、業務にマッチするだろうか?
・この会社で活躍してくれる人物だろうか?
・会社の理念や価値観に共感してくれるだろうか?
こういったことを見極めたいですし、

 

採用される側は、
・職場の人間関係は良好か?
・自分の能力や経験を活かせる仕事だろうか?
・仕事の成果に見合った待遇を得られそうか?
・この会社で活躍していけそうか?
・会社の理念や価値観に共感し、長く働きたいと感じるだろうか?
こういったことが気になると思います。

もちろん会社説明会や面接の段階で、お互いにこれらがわかればいいのですが、やはり一度実際に働いてみないことには、わからない部分が多いでしょう。

 

試用期間を設けてみよう

そこで、大切なのが「試用期間」です。
文字通り「お試しの期間」を設けることで、採用する側もされる側も、お互いに見極めることができます。

試用期間は、入社から2~6ヶ月程度の期間を区切り、その間は契約の解除をやりやすくしよう。という期間です。法的には「解約権留保付労働契約」といいます。
この期間は、通常の解雇より、解雇の自由が認められやすいとされています。

 

試用期間を活用するために

次のことを明確にしておきましょう。
① 本採用にならない事由
たとえば、
・無断欠勤、遅刻などがあった場合
・健康上の問題が判明したとき
・勤務態度や業務遂行能力、適性に問題があり、社員として不適格であるとき
・会社に申告した経歴や能力に偽りがあったと認められるとき
など。これらは、万が一、本採用拒否をする場合に、解雇権濫用とされないために定めておくことが必要です。

 

② 試用期間満了時に達成すべき目標
たとえば、
・店のメニューを全部暗記する
・○○のプレゼンができるようになる
・先輩に教えてもらった業務について、マニュアルを完成させる
・お客様の名前と顔を暗記する
など、それぞれの職種に応じて、真面目に取り組めば達成できる難易度で目標を設定するといいでしょう。

 

私は、個人的には②が大切だと思っています。
試用期間を漫然と過ごしてしまわないよう、具体的な目標を設定し
それに取り組む姿勢や、実際に目標を達成し成果をだせるかどうか、
また、目標達成に周囲の協力を得られる人間性の持ち主かどうかなど、
たくさんみるところがあるでしょう。

 

職場で、人生の長い時間を共に過ごす仲間です。
結婚する前に「交際期間」があるように、本採用の前に「試用期間」がある。
と考えてみるといいかもしれません。

 

社会保険労務士/八幡順子