【社長さん、会社のお金は自分のお金ではありませんよ!】(公認会計士・伊藤弥生)

こんにちは、クロスオーバーネットワークの伊藤弥生です。

今日は、法人経営にとって大切な「お金」の話です。

 

業務上横領!?

まず、あなたが会社に勤めていたとして、オフィスの金庫にあるお金を勝手に持ち出したらたいへんなことになると思います。
これが業務上横領罪に該当する場合、刑事罰が科されたり懲戒解雇処分を受けたりすることにもなりかねません。

 

こんなこと当たり前!誰が会社のお金を盗むねん!って思いますよね。
ただ、これが会社を経営するとなると変わってくるんです。

 

出資することはオーナーになること。

会社経営には先立つもの=お金が必要です。
店舗を構えるにも、オフィス機器をそろえるにも、人を雇うにも資金が必要なわけで、この資金を工面することから始まるわけで。
資金の集め方はいろいろありますが、まずは自分の貯金を取り崩す人がほとんどでしょう。
これがいわゆる自己資金=資本金になります。

 

この資金を自分で出している(もう少し専門的にいうと出資しているということですね)ことから、
「会社のお金は自分のお金」
という発想になってしまうんですよね。

 

法人を「作り出した」!

ただ違います。

 

会社は「法人」。
社長個人とは別の「人格」なのです。

会社を作り出した段階で別の人を作った!ってとこなんですよね。
意外とこの感覚、大切です。

 

オーナー社長、って言い方をするのですが、
100パーセント出資をしたことで「株主=会社の所有者=オーナー」になり、
社長につくことで「会社の役員=経営者」になります。

経営者という立場からみると、
「あなたの作った会社」に「雇われている」という立て付けになるんですね。
(ほんとは、雇用契約ではなく委任契約を結んでいるのですが難しいことは抜きにして)

 

会社のお金と自分のお金は違う。

会社のためになるように、会社という立場でお金を動かしていく。
自分の財布と会社の財布は別!
これを頭にたたきつけておいてください。

 

たとえば、「いつか返すからいいや」ということで、会社の金庫からお金を拝借。
中小企業には良くあることではないでしょうか。

でもこれって、会社という人が社長個人へお金を貸しているという扱いになるんですよ。
そして会社は商売でお金を貸しているという解釈となり、会社は利息をもらいなさい、もらった利息はもうけだから税金を払いなさい、となります。
しかもこれは税務調査なんかで発覚して、そんなん知らんかった!ってことになりがちです。

 

もっといえば、会社の金庫からお金を拝借。これで家族旅行。
旅館の領収書を「交際費」として処理した場合。
やっぱり、社長個人の支出を会社が負担したということになり、社長への貸し付けかもしくは、報酬を支払ったと認定されることになります。
貸し付けだったら利息の受け取りしてたの?ってなるし、報酬を払ったということになれば源泉徴収はしていたの?そもそも税務上、認められる報酬なの?という話が出てきます。

だからこそ、会社のお金は自分のお金ではない、自分は会社という別の組織で雇われていて、会社のために働いているんだという理解が必要です。
その上で、働きに見合った役員報酬を受け取ったり、オーナーという立場でもうけの分け前を配当としてもらっていくことになるのです。

 

法人成りのその前に。

多くの創業者は、個人事業から法人成りすることが多いです。
個人事業は特に事業のお金と個人のお金が曖昧になりやすいので、個人事業の時から、事業のお金と個人のお金を分けるようにしておくと良いでしょう。
具体的には、事業用の通帳を作る、事業用の小さな金庫を用意してそこで現金を管理する等。

個人事業のうちにしっかり管理しておくと、法人になってから楽ですよ。

 

公認会計士・税理士/伊藤弥生