こんにちは、クロスオーバーネットワークの八木香織です。今回のテーマは、株式会社における取締役会についてお話します。
取締役会とは?
テレビドラマでは、よく会社の重役達が立派な会議室で、大きなプロジェクトのプレゼンを、重役達がしかめ面で聞いているシーンだとか、電撃的な社長解任決議が行われるシーンなどで取締役会が登場します。
この取締役会とは、会社法によって定められた株式会社の機関であり、株主総会で選任された取締役3名以上で構成され、会社の業務執行の意思決定を行います。また、取締役の執行を監督する機関でもあります。
取締役会では、このように、大きなプロジェクトの決定や、また代表取締役の選任・解任など会社の重要な意思決定が行われます。また、合議体をとることにより、一人の経営者による独断専行を防ぐ役割も担っています。
会社法において、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、支配人その他重要な使用人の選任・解任、支店その他重要な組織の設置、株主総会招集の決定、計算書類の承認など、取締役会で決議しなければならない事項が定められています。
さらに、取締役会は少なくとも3か月に1度は開くこと、また出席した取締役・監査役の署名または記名押印された議事録を作成・保管することなど取締役会に関する厳密な規定が定められています。
取締役会は必ず設置しなければならない?
と、このように会社法の取締役会の規定を見ていくと、なにやらたいそうな感じがします。上場しているような大きな会社なら当然のこととして、これから起業しようとする方や個人で事業をしていたが規模が大きくなってきたので会社にしたいという方にとっては、実情に合わないと感じられたと思います。
株式会社を設立するには必ず取締役会を設置しなければならないのか。以前は、株式会社であれば必ず取締役会を設置しなければなりませんでした。しかし、現在の会社法においては、株式会社譲渡制限会社であれば、取締役1人の株式会社も認められ、また取締役会を設置するかどうかは任意とされています。ここで株式譲渡制限会社とは、株式を売る際に、定款で会社の承認が必要であると定めてある株式会社のことを言います。
ですから、定款に、株式を売る際には会社の承認がいる旨を定めれば、株式会社を設立する際、取締役会を設置する、しないを選ぶことができます。また、取締役会を設置している既存の株式会社でも、取締役会を廃止することができます。
すなわち、現在の会社法では定款の自治の観点から、株式会社においても様々な機関設計が可能になっています。そこで、次に、取締役会を設置するメリット・デメリットについてお話します。
取締役会を設置するメリット・デメリット
取締役会を設置するメリットは、株主総会を開催することなく、取締役会で迅速に会社経営の意思決定をすることができることがあげられます。取締役会を設置しない場合、経営者が全ての株式を保有している場合は関係ありませんが、会社の重要な意思決定はすべて株主総会で決めることになっているので、経営者以外に株主がいる場合は、何かにつけて株主総会を招集しなければならなくなるのです。
また、複数の経営者がいる会社の場合、原則それぞれの経営者が代表権を有することになるので、ともすると、特定の経営者が独断専行に走りがちになります。取締役会を設置することにより、重要な業務執行が合議のもとに行うことができます。
そして、金融機関などから融資を受ける場合や大きな取引を行う場合、取締役会を設置していると、会社の信用が高まる場合があります。また、融資や提携等の取引によっては、取引の条件として、取締役として相手方の人材を受け入れなければならない場合もでてきます。
一方で取締役会を設置するには、取締役3名と監査役1名、最低4名の役員を置くことになり、それらの報酬が発生します。
また、取締役会を設置している会社では、株主総会の招集通知を原則書面でしなければならず、また定時株主総会を招集する際には計算書類や監査報告書を添付しなければなりません。
まとめ
結局のところ、取締役会を設置するかしないかは、経営の規模、経営者や株主の人数や関係などの経営の実情を考慮して判断することになります。
まだ実質的に創始者が経営を一手に担っているような場合、取締役会は形骸化してしまい、費用と手数だけかかるものになりがちです。ですから、会社の規模がまだ小さい場合は、取締役会を設置する必要はないかも知れません。しかし、経営者以外の株主がいて株主総会での意思決定がスムーズに行えなくなったり、将来、会社の規模を大きくし株主が増える可能性がある場合、大きな融資や取引などを行うようになった場合などには、取締役会の設置を考えることになります。
弁護士 八木香織