こんにちは、クロスオーバーネットワークの八ツ元優子です。
今回は、業務委託契約①として「委任と請負の違い」について、書かせてもらいます。
ん?業務委託契約の話として、なぜ、「委任と請負の違い」が出てくるの?
と疑問を持たれた方、いい疑問ですね(池上彰風)!
業務委託契約の「委託」は、第三者に対し「何らか」の依頼をすることです。
この「何らか」の依頼方法として、「委任」と「請負」があります。
「委任」と「請負」では、依頼を受けた方の報酬請求や責任について違いが出てきます。
この違いをしっかり意識した上で、業務委託契約を締結してもらいたい、ということで、以下、「委任と請負の違い」を書いていきます。
委任と請負の根本的な違い
委任と請負の根本的違いは、仕事の完成を目的とするか否か、にあります。
請負が仕事の完成を目的とする契約であるのに対し、委任は仕事の完成を目的としません。
委任と請負の具体例
仕事の完成を目的とするか否かの違い・・・、イメージし辛いかもしれません。
具体例で説明しますね。
委任の代表的な具体例は、患者さんと医者(病院)の診療契約です。
医者は、患者さんの病気の治療を行います。しかし、残念なことに、その病気が完治しないことがあります。もしかすると、完治しないどころか病状が悪化することもあります。
その場合、患者さんは、「病気が完治しなかった!だから、治療費は支払わない」と医者(病院)に言えるでしょうか?答えはNOです。診療契約は、病気の完治という、仕事の完成を目的としないからです。
医者が診療を行った以上、仕事の完成という結果に拘わらず、患者は、治療費(医者や病院側から見たら報酬)を支払わなければなりません。
これに対し、請負の代表的な具体例は、建設請負契約です。
建物を建てるという建築請負契約を締結した建築業者は、建物を完成させないといけません。発注者は、建物の完成に対し、報酬を支払います。
委任と請負の比較
具体例を通じて、委任と請負の根本的な違いを少しイメージできたところで、委任と請負の違いを比較してみます。
委 任 | 請 負 | |
目的 | 事務の処理 | 仕事の完成 |
報酬 | 事務処理に対する対価
(委任者の予期した結果が生じなくても報酬請求できる) |
仕事の完成に対する対価
(注文者の予期した結果が生じなければ報酬請求できない) |
責任 | 善管注意義務
=委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって事務を処理義務 |
瑕疵担保責任
←完成した目的物について欠陥があった場合に請負人に負わされる責任(瑕疵修補、契約解除、損害賠償) |
収入印紙 | 不要
※但し、必要となるものもある。 |
必要 |
ざっくり言ってしまうと、仕事の完成を目的とする請負の方が責任は重いです。
■報酬は、仕事を完成させないと報酬が得られない。
■完成した仕事に瑕疵があれば、瑕疵の修補などを行う瑕疵担保責任を負います。
まとめ
以上、
・業務委託契約には、委託方法として、「委任」と「請負」がある
・「請負」の方が責任は重い
を覚えておいてください。
端に『業務委託契約書』と契約書に書いてあっても、委託?請負?と意識して契約書を眺めてもらえれば、と思います!
弁護士 八ツ元優子