こんにちは、クロスオーバーネットワークの小玉恵美です。
さて今回は建築士目線での飲食店の店舗探しのコツとして、「そんなの知らなかった!」を防ぐための2つの法律をご紹介させて頂きます。
まずは地域選び。~1つ目の法律『都市計画法』~
実は日本全国どこでも飲食店が出来るわけではないんです。
日本の土地は『都市計画法』という法律によって「用途地域」というものが定められています。
どういうものかと言うと、、、
工場地帯の真ん中に小学校があったら良くないですよね。
閑静な住宅街に火薬倉庫があったら危険ですよね。
出来る限り、そういった用途の混在を防ぐために地域ごとにできるものを制限するのが「用途地域」です。
飲食店なんてどこにでもあるじゃないか!と思いますが、実際には飲食店ができない地域があるんです。
それって意外な落とし穴ですよね。
「住居専用地域」と「工業専用地域」では基本、飲食店は出来ません。
とは言え、制限内容はかなり細かく決められていますので店舗の大きさや運営方法によっては、実際には殆どの地域で飲食店をする事が出来ます。
例えば、住宅兼用にすると条件はありますが「住居専用地域」でも営業可能です。
ちなみに、パン屋さんやお菓子屋さんの様に作業場を設ける場合は制限が厳しくなり、飲食店が出来る地域は少なくなります。
店舗の規模、運営方法、作業場を伴うのかどうかなど、内容をざっとまとめてから場所選びを開始すると後々、そんなの知らなかった!を防ぐことが出来ます。
細かい用途制限内容については、建築士さんや、用途地域・用途制限に詳しい不動産屋さんに相談してくださいね。
建物選びは昭和56年が一つの目安。~2つ目の法律『建築基準法』~
我々建築士が建物を設計する際に守るべき基準として『建築基準法』という法律があります。
その中に、建物の耐震性に関する基準『耐震基準』というものがあります。
これによって建物の地震への安全性は確保されています。
この耐震基準は1981年(昭和56年)に改定されており現在の基準を『新耐震基準』、それ以前を『旧耐震基準』と言います。
この『新耐震基準』では震度7でも倒壊しない建物と規定されており、旧耐震よりも強度が上がっています。
さて、こちらも少々小難しい内容ですがこの基準、店舗を開店する上でも大きく関係する事があります。
先にも出てきました『用途』という言葉。例えば、『住宅』と『店舗』では用途が違いますよね。
『用途』が違うとどうなるか。
適応すべき法律が変わり、適応させるべくもう一度建物全体を見直さなければなりません。
どういう事かと言いますと、『旧耐震基準』の建物の場合、『新耐震基準』に合わせた強度にしなければなりません。建物を調査し、図面を起こし、強度計算をし、役所に届け出て、補強工事をして・・・
となり、それにはかなりの建築費用と時間がかかります。テナントに入るだけの場合、なかなかハードルの高い話です。
でもこの話は、店舗面積が100㎡以上の場合だけ。
100㎡未満の場合は用途変更に伴う建築基準法上の手続きは不要となります。
店舗探しでは、立地やアクセスなどの営業後の事は重要ですが、その地域で、その建物で営業を始められるかどうかも重要な検討事項となります。
「そんなこと知らなかった!」にならない為にも覚えていてくださいね。
ここがポイント!
- 用途地域は住居専用地域・工業専用地域ではありませんか。
- 建物は昭和56年以降に建てられたものですか。
- 店舗面積が100㎡以上なら建物用途に要注意。
一級建築士 小玉恵美