【学生起業ブーム?】(公認会計士・税理士 伊藤弥生)

先日、起業して株式会社を設立した大学生と話す機会がありました。その人によると、今は、就職活動に熱心に取り組みながらも、起業にも興味があるという学生が増えているとのことです。

そういえば、最近関西で開かれた起業家支援イベントへ行ったのですが、5千人以上収容できる会場が大学生らしき若い人達で埋め尽くされているのに驚きました。起業という選択肢もあることが学生達に浸透しつつあるのかもしれません。

もちろん、本気で起業を目指している学生は少数派でしょう。会場で話を聞いていると、起業して会社経営者になるということになんとなく憧れがあるだけという人が多そうでした。しかし、それでも起業という選択肢が身近になれば、何人かの学生はどう起業しようかと真剣にビジネスの勉強をするでしょう。それにより今の自分に不足しているものに気づくことは、就職活動を含め今後の人生に大きく役立つと思います。

私は10年以上起業支援に携わってきましたが、じつは学生の起業にあまり肯定的ではありません。それは、起業するのに必要なものが不足し過ぎているからです。営業のための人脈、会社経営に必要な法務・経理・労務の知識、自分を支えてくれる実務経験豊富な人材など、挙げればきりがありません。もちろん、全てを備えて起業する人はいないでしょうが、不足し過ぎは危険かなと思っています。

そこで、起業するために不足している能力を身につけるために就職するというのも一つの方法かと思います。

自分が起業したい業界に就職して人脈を築く、法務・経理・労務の知識を習得する、何なら会社がどんな所か知ってみるという目的でも構いません。会社を内側から見て、営業・経理・人事・総務って何をしててなぜ必要なのだろうと考えて調べるだけでも得るものがあると思います。また、個人では経験できないような巨額の取引を経験することも将来に役立つと思いますよ。


公認会計士・税理士 伊藤弥生